これが新型コロナワクチン開発の現状だ。ワクチンには限界がある。ただ、それでもアストラゼネカやファイザー・ビオンテックがワクチン開発に乗り出す心意気には、心から敬意を表したい。新型コロナに特効薬はなく、薬剤の開発を積み重ねることでしか新型コロナを克服できないからだ。

 新型コロナについて「ただの風邪」という主張をする人もいるが、これは大間違いだ。日本の致死率は1・9%(10月5日現在)で、インフルエンザ(0・01~0・1%)とは比べものにならない。さらに長期的な後遺症をもたらす恐れもある。第1波では川崎病に類似した疾患が注目されたが、最近になって妊婦への影響や心筋炎の存在も分かってきている。

 9月11日、米オハイオ大の医師たちは『米医師会誌(JAMA)心臓病版』に、新型コロナに感染した大学生アスリート26人の心臓を調べたところ、4人に心筋炎の所見を認めたと報告している。この研究では12人が軽症、14人が無症状だった。同様の研究はドイツからも報告されている。

 心筋炎は不整脈を合併することが多く、時として突然死を引き起こす。診断されれば、普通は集中治療室に入院して、不正脈を継続的にモニターされる。ところが、感染者は軽症か無症状で、心臓に関する特別なケアは受けていない。日本でも、軽症の新型コロナ感染症患者の突然死が報告されているが、このようなケースだった可能性がある。

 季節性コロナは高率に心筋炎を起こしたりはしない。新型コロナはただの風邪ではない。では、どうすればいいのか。私はインフルエンザ対策がモデルになると考える。

 インフルエンザは突然変異しやすく、毎年ワクチン接種が必要だ。ただ、ワクチンを打っても完全には予防できない。重症化を防げるだけだ。ワクチンの限界を埋めるのが、タミフルなどの抗ウイルス剤だ。

 さらに、最近はインフルエンザ対策の重要性が社会で認知され、感染の疑いがある人は無理に出社せず、自宅待機できるようになった。こうやって毎年、多くの人がインフルエンザをやり過ごしている。新型コロナも同じようになるのではないだろうか。
「GoToトラベル」に東京が対象に加わり、初の週末を迎えた東海道新幹線のホーム=2020年10月3日、JR東京駅(佐藤徳昭撮影)
「GoToトラベル」に東京が対象に加わり、初の週末を迎えた東海道新幹線のホーム=2020年10月3日、JR東京駅(佐藤徳昭撮影)
 新型コロナはインフルより強敵だ。ワクチンは複数の製品をカクテルするようになるかもしれない。アビガンや、今後開発される薬剤を感染早期に服用するようになることも考えられる。さらに、外出時のマスク着用が浸透し、社会的距離の取り方もこなれてくるだろう。こうやって新型コロナとの付き合い方が確立していくはずだ。ワクチン開発はその第一歩となろう。小さくとも、人類にとって大きな一歩に期待したい。