2020年10月10日 10:37 公開

ノルウェーのノーベル委員会は9日、2020年のノーベル平和賞を国連世界食糧計画(WFP、本部・ローマ)に授与すると発表した。世界各地で飢餓と闘い、平和実現のための条件改善に貢献したと評価した。

ノーベル委員会は授与理由について、「飢餓と闘う努力、紛争影響下の地域における平和実現の条件改善への貢献、飢餓が戦争や紛争の武器として利用されないための努力」を挙げた。

ベリト・ライスアンデシェン委員長はオスロで記者会見し、「飢餓や、飢餓の脅威に直面する何百万人もの人に、世界の目を向けたかった」と説明。「食料の安定を平和の道具にするための多国間協力にといて、世界食糧計画の役割は鍵となる」と評価した。

ノーベル委員会は、新型コロナウイルスのパンデミックがWFPの重要性をあらためて高めたと指摘。「コロナウイルスのパンデミックは、世界中で飢餓の被害者の人数急増に影響した」と委員会は声明で述べ、「パンデミックに直面しながら、世界食糧計画は見事なまでにその取り組みを強化した」と評価した。

WFPは今年、パンデミックの影響で世界に「聖書級の規模」の飢餓が広がる危険があると警告していた。

 WFPは、学校が休校になった地域にも持ち帰り用の食料を届けたり、食料配給拠点でせっけんの提供や手洗いの指導をしたりしている。ライスアンデシェン氏は、「WFPは(新型コロナの)パンデミック(世界的な大流行)に直面して、その取り組みをいっそう強化する印象的な能力を発揮した」とたたえた。その上で、WFPが使うフレーズを引用して「私たちが医療用ワクチンを接種できる日が来るまで、食物は混乱に対する最良のワクチンだ」と述べた。

101回目になる今年の平和賞は、211人と107団体の候補から選ばれた。賞金は1000万スウェーデンクローナ(約1億2000万円)。

受賞を知ったWFPのデイヴィッド・ビーズリー事務局長はBBC番組「ニューズアワー」に対して、「生まれて初めて、文字通り、言葉が出なかった」と、受賞の知らせに衝撃を受けたと話した。

「世界中で苦しむ人たちのために最前線で自分の命を危険にさらす、世界食糧計画の全員の働きを認めていただいた。なのでこの受賞は、世界食糧計画が大勢にとってのお手本で、みんなしてますます努力しなくてはならないという、合図でメッセージなのだと思う」

ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、「まさに受賞に値する組織のひとつだ。(世界食糧計画の)人たちは他人を助けるため素晴らしい働きをしており、このノーベル平和賞の授与に私はとても喜んでいる」と歓迎した。

ノーベル平和賞の昨年の受賞者は、国境紛争の解決に尽力した東アフリカ・エチオピアのアビー・アハメド首相だった。さらにその前年2018年には、強姦被害者を支援する活動家、ナディア・ムラド氏とデニ・ムクウェゲ医師が選ばれている。

国連世界食糧機関は、世界中の国々に食糧支援を提供する。昨年1年間で、厳しい食料不安や飢餓に苦しむ88カ国の1億人を支援したという。

設立は1961年。国連の仕組みを通じて世界に食糧支援を提供する枠組み構築を、当時のドワイト・D・アイゼンハワー米大統領が対象したことがきっかけとなった。

設立からまもなく、イラン北部の大地震被害に対応し、生存者に小麦粉や砂糖、茶などを提供。近年では、紛争や飢饉(ききん)に苦しむイエメンやアフガニスタン、シリア、南スーダンなどの人たちにを支援してきた。

ただし、批判も皆無ではなく、昨年の内部調査では少なくとも職員28人が職務中に強姦や性的暴行を経験したと報告した。さらに640人が、性的嫌がらせを自ら経験したか、目撃したとしている。ビーズリー事務局長は当時、AP通信に対して、「変化実現のために厳しい選択をしている」と話していた。

(英語記事 Nobel Peace Prize: UN World Food Programme wins for efforts to combat hunger