2020年10月12日 13:07 公開

米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長は11日、自分の発言が意味を変えてトランプ陣営に大統領選の選挙広告として使われていると発言した。

トランプ陣営の広告では、ファウチ博士は新型コロナウイルスとの闘いで「これ以上のことを誰かができるとはとても思わない」と、ドナルド・トランプ大統領について発言しているかのように見える。

しかし、ファウチ氏はトランプ氏ではなく、自分や感染対策の当局者について話していた。

ファウチ博士はAFP通信に対して、「約50年間にわたり公務員として働いてきたが、一度も特定の候補者を公に支持したことはない」と声明を送った。

「共和党の選挙広告で私の許可なく私の発言だとして使われたものは、数カ月前に私が連邦医療当局の対応について一般論として発言したもので、文脈を無視して使われている」と、博士は説明した。

30秒の広告は、「トランプ大統領はコロナウイルスから回復しつつある。アメリカもだ」と宣言した後、ファウチ博士が発言する映像を流す。

しかし、今年3月にフォックス・ニュースのインタビューで博士が発言した際の実際の映像を見ると、ファウチ氏は「私はこのことにほとんど全ての時間を使っている。毎日のようにホワイトハウスでタスクフォースといる。毎日だ。なので、どういう状況だろうと、これ以上のことを誰かができるとはとても思わない」と述べていた。

ファウチ博士の反論について、トランプ選対のティム・ムルトー広報担当は、「これはファウチ博士自身の言葉だ。ビデオは全国的に放送されたテレビインタビューで、そこでファウチ博士はトランプ政権の取り組みを称賛していた。使われた言葉は正確で、ファウチ博士の口から直接出たものだ」と述べた。

トランプ大統領もこの選挙広告を擁護し、「確かにファウチ博士自身の言葉だ。我々は『見事な』対応をした。一部の知事もそう言っている」とツイートした

感染症対策の専門家として米政府の新型ウイルス対策に大きく関わってきたファウチ氏は9日には、ホワイトハウスでの式典が「スーパースプレッダー・イベント」だったのは明らかだと発言し、ホワイトハウスの感染対策を批判していた。9月26日にホワイトハウスで行われた最高裁判事候補の指名式典の出席者の内、少なくとも11人の感染が発覚している。

ファウチ博士は以前から、感染予防策としてマスク着用と社会的距離の重要性を強調。7月には、マスクの是非について政権の発言が一貫しないことを問題視していた。

10月2日に新型ウイルス陽性を発表し、入退院したトランプ氏は、自分が受けた未認可の治療法がCOVID-19を「治した」と発言し、国民に無償で提供する用意があると話している。

またホワイトハウスは10日、主治医ショーン・コンリー医師の診断を発表。それによると、「大統領は自主隔離を安全に終了するための疾病対策センター(CDC)基準を満たしただけでなく、今朝のPCR検査の結果、現行の基準では、すでに他人へ感染させるリスクがなくなった」ほか、発症から10日目の現在、24時間以上にわたり発熱がなく、全ての症状は改善し、高度な診断検査の様々な結果から、ウイルスが複製されているという証拠はもはやないと明らかになった」という。

一方で、ホワイトハウス職員や政権関係者の間ですでに30人以上の感染が明らかになっている。共和党幹部のミッチ・マコネル上院院内総務は8日、ホワイトハウスの感染対策を疑問視し、自分は8月上旬からホワイトハウスを訪れていないことを明らかにした。

今月2日の陽性発表以前にトランプ氏が最後に陰性と判定されたのはいつか、複数の報道機関が繰り返し質問しているものの、ホワイトハウスはこれに答えていない。

ABCニュース/イプソスが今月3日と4日に実施した世論調査では、トランプ氏のパンデミック対応を評価する人は35%で前月と変わらず、トランプ氏が新型ウイルスの感染リスクを十分真剣に受け止めていると答えた人は27%だった。

米ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると(日本時間12日午前現在)、新型ウイルスによるアメリカの死者は21万4700人以上。

トランプ氏は10日にホワイトハウスのバルコニーから支持者に向かって演説したのに続き、12日にはフロリダ州サンフォードで大規模な支持者集会を開く予定。

ミネソタ州保健当局は9日、トランプ陣営が9月18日に州内で開いた選挙集会に関連して、9人の感染が確認されたと発表した。

11月3日の投開票日に向けて、野党・民主党のジョー・バイデン大統領候補がトランプ氏に対して全国世論調査では1ケタのリードを維持している。


(英語記事 US Election 2020: Anthony Fauci says Trump campaign ad quote misleading