2020年10月13日 12:12 公開

ドナルド・トランプ米大統領が連邦最高裁判所の判事に指名したエイミー・コーニー・バレット氏(48)の公聴会が12日、連邦議会上院の司法委員会で始まった。バレット氏は指名について、「名誉であり謙虚に受け止めている」と述べた。

実質的な就職面接試験である公聴会でバレット氏は、裁判においては公平な判断をすると誓った。

来月3日の大統領選挙を目前に始まった公聴会をめぐっては、激しい政治的対立が生じている。

上院司法委員会のリンジー・グレアム委員長(共和党)は、「議論が沸騰する1週間」になるとの見通しを示した。

保守派のバレット氏が承認されれば、最高裁判事の構成は6対3で保守派優勢が強固になる。最高裁のイデオロギー面でのバランスを、今後数十年にわたって変える可能性がある。

トランプ氏は、リベラル派の最高裁判事ルース・ベイダー・ギンズバーグ氏が先月、87歳で死去したことを受け、バレット氏を新たな判事に指名した。

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バレット氏の発言

バレット氏は公聴会の冒頭、「私はギンズバーグ判事の補充として指名されたが、誰も彼女の穴を埋めることはできない」、「彼女が切り開いた道と彼女が送った人生に対し、いつまでも感謝し続けるだろう」と声明を読み上げた。

トランプ氏への謝意も表明。「重大な責任を私に任せてくれた」のは「生涯の名誉」だと述べた。

また、家族の重要さに言及し、両親が「奉仕、道義、信念、愛のある人生」へと導いてくれたとした。

声明ではさらに、保守派の最高裁判事だったアントニン・スカリア氏(故人)ら、これまで共に働いた裁判官らに敬意を表明。

スカリア氏の判断が「私を形づくった」とし、「彼の法哲学はまっすぐで明快だった。裁判官は法律を書かれた通りに適用しなくてはならないのであり、裁判官が望むようにではない」と述べた。

バレット氏はまた、「政策決定や価値判断」をするのは選挙で選ばれた政治家であり、最高裁判事ではないと主張した。

「どの裁判でも、当事者の主張を慎重に検討し、裁判所の同僚らと問題点を協議し、法律が要求する決着に到達するよう最大限の努力をしてきた。私の好みは無関係だった」

なぜ賛否?

最高裁判事は終身制で、その判断は銃や投票権、妊娠中絶、選挙資金など幅広い問題に大きな影響を及ぼす。

バレット氏は第7巡回区控訴裁判所判事として、保守的な見解や判断を示してきた。それらは、ギンズバーグ氏のリベラルな哲学とは対立するものとされる。

それだけに、民主党議員らはバレット氏の判事就任に反対しており、公聴会では厳しい姿勢で質問を投げかけることが予想される。公聴会を大統領選の後に開くべきだとの意見も出ている。


一方、共和党議員らは、トランプ氏と民主党大統領候補のジョー・バイデン氏が対決する大統領選の前に、指名の承認を完了させることを狙っている。共和党は承認の権限をもつ議会上院で、僅差ながら多数派となっている。

共和党のグレアム上院司法委員長は、バレット氏について、「極めて優秀であり、この国が誇りとすべき人物」と述べた。

これに対し民主党のダイアン・ファインスタイン委員は、バレット氏が最高裁判事に就任すれば、医療保険制度改革法(オバマケア)が危機に置かれかねないと主張。健康保険の対象者を拡大させる同法に対しては、トランプ政権が最高裁で争う姿勢を示している。

ファインスタイン氏は、「簡潔に言って、この指名は前に進めるべきではない」とし、公聴会は大統領選が終わるまで延期すべきだと訴えた。

民主党の副大統領候補のカマラ・ハリス委員も、同党の他の委員らに同調。バレット氏の指名について、ギンズバーグ氏の「レガシーと、熱心な闘いによって守った権利」を「危険にさらす」と主張した。

「ルース・ベイダー・ギンズバーグ判事の後任に、彼女のレガシーを台無しにする人を据えることで、トランプ大統領は今後数十年間、アメリカ人の権利を削ろうとしている」、「すべてのアメリカ人が、この指名で法の下の平等が脅かされていることを理解しなくてはならない」。


民主党のパトリック・リーヒー委員(ヴァーモント州)は、ギンズバーグ氏の「死去が発表されたわずか1時間後に」共和党は後任選びに動いたとし、「恥ずべき」だと述べた。

一方、共和党のチャック・グラスリー委員(アイオワ州)は、民主党側が「根拠のない主張と脅迫戦略を繰り広げ」、バレット氏と「彼女の宗教的信仰を徹底してけなす」だろうと予測した。

BBCのアンソニー・ザーカー北米担当記者は、この日の公聴会では民主党側が、妊娠中絶の問題を避けたと指摘。賛否両論が巻き起こるトピックには触れず、同党にとって望ましい政治環境をつくろうとしたと説明した。

また、共和党側については、指名承認をめぐる状況は異常かもしれないが、承認に至る自信をもっていると解説した。

承認手続きはどう進む?

上院司法委員会の公聴会は、今週いっぱい続くと見込まれている。

終了後、委員会は採決によって、指名を承認して上院本会議にかけるかを決める。どの委員も、採決前に1週間の時間を求めることができる。議場外でリモート投票ができるのかは明らかになっていない。

委員会がバレット氏の指名を承認すれば、上院本会議での採決へと移る。共和党側はすでに、承認に必要な51票を確保しているとみられる。


共和党のミッチ・マコネル上院院内総務は、大統領選までに本会議での採決を終わらせると宣言している。

予想外のことが起こらない限り、民主党がバレット氏の最高裁判事就任を止めることは難しいとみられている。

激しい政治対立

ギンズバーグ氏が9月18日にがんで死去して以降、共和党上院議員らは、大統領選に合わせて最高裁判事の指名を押し通そうとするのは偽善的だと批判されている。

マコネル上院院内総務は前回大統領選があった2016年、バラク・オバマ大統領(当時)によるメリック・ガーランド氏の最高裁判事指名について、公聴会を開くのを拒んだためだ。

大統領選の237日前に発表されたガーランド氏の指名は、上院で多数を占める共和党によって阻まれた。共和党上院議員らは、最高裁判事は大統領選のない年に決められるべきだと主張した。

マコネル氏は今回、バレット氏の指名を称賛している。

民主党議員らは共和党議員らに対し、これまでと一貫した態度を取るべきだと主張。有権者の判断を仰ぐべきだとしている。共和党議員らは、民主党側も2016年以降、姿勢を変えていると反論している。

民主党大統領候補のバイデン氏は、トランプ氏によるバレット氏の指名について、「権力の乱用」としている。

バイデン氏はこれまで、大統領に当選した場合、民主党として最高裁判事の定員を増やす考えがあるのかについてコメントを拒んでいる。

(英語記事 Trump pick testifies in tense Supreme Court hearing