2020年10月13日 12:03 公開

ボリス・ジョンソン英首相は12日夜、国内で新型コロナウイルス感染者が急増している現状は「まるで旅客機の計器盤で点滅する警告灯のようだ」と首相官邸記者会見で述べた。ただ、「いま現在」は全面的なロックダウンは再開しない方針を示した。

ジョンソン首相は官邸で、「私たちはコロナウイルスとの闘いで新しく、決定的な段階に入りつつある。感染者の人数は4週間で4倍になり、またしても高齢者や弱い人たちの間で広まっている。COVID-19でイギリス国内の病院に入院中の人は、(ロックダウンを開始した)3月23日より多い」と述べた。

その上で首相は、イングランドで地域の感染状況に応じて「中程度」、「高い」、「とても高い」に分けた3段階の警戒態勢と規制を実施すると発表。同時に、全国的なロックダウンという「極端な対応」は「いま現在」は実施しないと話した。

イングランド北部のリヴァプール周辺は14日から、「とても高い」規制の対象となる。異なる世帯の人たちは屋内・屋外を問わず集まることが禁止され、「中身のある食事」を提供しないパブやバーは休業対象となる。

イングランドのほとんどの地域は「中程度」の警戒態勢で、「6人ルール(同一世帯以外の人とまとめて会えるのは最大6人)」を継続し、パブやレストランは午後10時に閉店することが求められる。

首相によると、小売店はイングランド全域で営業を続ける。学校、大学も授業を続ける。

イングランドの医務主任、クリス・ウィッティー教授は官邸会見で、「とても高い」警戒態勢の対象となる地域では、政府が指示する以上の対策が必要となるだろうと述べた。

しかしジョンソン首相は、規制を「とても効果的に」実施すれば、これで十分のはずだとして、「ただちに行動しなくてはならない」と強調した。

一方で、政府の科学顧問たちによる緊急科学諮問会議(SAGE)が9月21日の時点で、感染拡大を食い止める「サーキットブレーカー」として、短期間のロックダウンを即刻実施するよう提言していたことが同日、政府による議事録公表で明らかになった

野党・労働党のジョナサン・アッシュワース影の保健相は、「政府はなぜ政府の科学者たちを無視したのか、ただちに説明しなくてはならない」と批判した。

これに対して首相官邸は、「我々は9月に精力的かつ対象を限定した、応分の行動をとった。これには、6人ルールや接客業の営業時間の制限、在宅勤務が可能な人への在宅勤務の奨励などが含まれる。対策が確かに実施されるよう、取り締まりも強化した。これは、生活への打撃を最小限に抑えつつ、命を守りウイルスの感染を減らすため、科学顧問たちとも相談を重ね、慎重に判断した結果だ」と反論した。

3段階の警戒レベルはイングランドにのみ適用される。スコットランド、ウェールズ、北アイルランドはそれぞれ自治政府が独自の対応を検討している。

イギリスでは12日、新たに1万3972人の感染が確認された。また、陽性判定から28日以内の人が新たに50人、亡くなった。

イングランドで3段階の規制

イングランドで実施される新しい規制は、警戒態勢を「中程度」、「高い」、「とても高い」の3段階に分ける。

イングランドの大半は「中程度」の警戒レベルで、屋内・屋外を問わず「6人ルール」が継続されるほか、接客業の営業は午後10時までという現行の規制も継続される。

すでに地元当局による追加規制が実施されている地域は「高い」警戒レベルとなり、別々の世帯の人が屋内で集まることは禁止される。「6人ルール」は屋外でも適用される。ノッティンガムシャー、東西チェシャー、グレーター・マンチェスター、南ヨークシャー、イングランド北東部などがこの対象となり、計約440万人が影響を受ける。

「とても高い」警戒レベルが最初に適用されるのは、人口計150万人のリヴァプールとその都市圏。パブやバー、ジム、カジノなどが閉鎖される。異なる世帯の人同士が集まるのは屋内だけでなく、屋外(庭や店外の座席)でも禁止される。公園など屋外の公共スペースでは「6人ルール」の実施を継続する。

飲食店は経営を続けるが、「とても高い」警戒レベル地域への出入りは控えるよう勧告される。

郵便番号で検索すれば自分の住む場所の警戒レベルと規制内容が分かる仕組みを、政府サイトで開始すると、ジョンソン氏は記者会見で述べた。

ジョンソン氏は記者会見に先立ち下院で新しい規制を説明し、「こういう風に暮らしたいと願うわけではない。しかし、全面的なロックダウンによる社会的・経済的トラウマと、まったく制御されていない感染拡大による巨大な人的、そして経済的コストの間の、細い道を慎重に歩いていかなくてはならない」と述べた。

首相は、「とても高い」警戒レベルの地域に対しては、総額10億ポンドの「追加経済支援」を自治体に提供する方針を示した。リシ・スーナク財務相は、新しい雇用支援策を検討中だと話した。

労働党のキア・スターマー党首は、「首相が発表した規制が、瀬戸際に立つこの国を助けられるかどうかが大事だ」と述べた。

政府に助言するリヴァプール大学のカラム・センプル教授(感染症専門)はBBCラジオに対して、新規制はもはや手遅れで、短期間の全国的なロックダウンが数週間以内に必要になるかもしれないと話した。

英国医師会(BMA)は、新しい規制は感染拡大の「原因ではなく症状」を手当てするものだとして、全国的な感染予防策の実施を求めた。

リヴァプールのジョー・アンダーソン市長(労働党)はBBCに、「規制強化の必要性については政府と同意見だ」としつつ、市が求めていた財政支援の強化に政府は応じなかったと批判した。

リヴァプール都市圏のスティーヴ・ロザラム市長(労働党)は、自分たちの地域への新しい規制は3月23日以降の全国的ロックダウンに「匹敵」するものだが、同程度の経済支援がないと述べた。

イングランド北部の一部地域は、7月下旬以来、屋内での集まりに一定の規制を設けている。

ロンドンのサディク・カーン市長は、ロンドンは「中程度」の警戒レベルだが、「状況はあっという間に変わる可能性がある」と指摘。「場合によっては今週中にも」ロンドンも「高い」警戒レベルに入るかもしれないと述べた。

(英語記事 Covid: Boris Johnson tells of 'dashboard warnings' over rise in cases / Covid: Sage scientists called for short lockdown weeks ago