実際に維新は大阪都構想成功のためになりふり構わず活動を繰り広げている。維新の代表である松井市長は、中立であるべき市選挙管理委員会に対して、投票用紙の記載を「『(大阪)市』ではなく『大阪市役所』を廃止」と求めたところ却下された。さらには維新が大阪都構想を推進する文言を書いたPR旗を繁華街に設置し、大阪市建設局から道路占拠許可基準違反を指摘された上、撤去を求められた。まさにルール無用とも言わんばかりのやりたい放題である。

 また、少人数利用・飲食店応援という目的で、大阪市のミナミエリアで特別に1予約につき、5千円以上の食事に最大で4千円分の還元キャンペーンを実施したのも、住民投票の前日までの予約・来店が対象であることを鑑みるに、都構想を成功させるために維新が実施した作戦あると私は見ている。おかげで10月だけは大阪のミナミエリアも人があふれ、密状態が多発している。

 ところで、8月11日に大阪市は大阪都構想の住民投票にかかる経費約10億7200万円を盛り込んだ補正予算案の概要を明らかにした。前回の住民投票にかかった費用は9億3200万円であるから、実際にその程度はかかるのだろうが、むしろその分をコロナ禍で生活苦にあえぐ市民へ回すべきだったのではないか。

 このような姿勢では、市民の安心安全などは二の次だと思われても仕方ない。新型コロナの感染拡大により収入が激減し、生活に困窮する事態に陥った大阪市民の中には、そんな市民感情を無視した議員による街頭活動に「今は他にすることがあるのではないか?」だとか、「住民投票に使うお金をまわすところがあるだろう!」と、憤りとむなしさを感じてしまう人もいる。大阪で常々言われているのが「大阪都構想ってよく分からない」、「説明不足なのでは?」という声だ。さらに言えば、私は維新の所属議員ですらまともに大阪都構想を理解している者は少ないのではないかと感じている。

 私が衆院議員時代、地元行事にて市民が維新の地方議員に対して「大阪都構想って何をするのですか?」と尋ねる場面に幾度か遭遇したことがあった。私自身も興味があったので、そのたびに横で聞き耳を立ててみた。すると皆、十中八九、次のような受け答えをするのだ。

 最初はまず「今の大阪には二重行政があるので、それをなくして税金の無駄をなくしたいです」と議員は答える。「例えば?」と市民に聞かれると、「大学とか市役所とか、いろいろある。ネットで松井代表も説明しているので見てください。とりあえず頑張っているので応援してくださいね」と皆必死にその場を乗り切っている。こんなことで市民のモヤモヤがとれるわけはないし、市民に対してその対応は失礼すぎるだろう。維新は「マスコミが大阪都構想をまともに報じてくれない」と批判ばかりするが、そういった地方議員の草の根活動の低レベルさに、理解が進まない要因が間違いなくある。
あべのキューズモール前で都構想への賛成を訴える大阪維新の会の守島正市議=2020年9月22日、大阪市阿倍野区(恵守乾撮影)
あべのキューズモール前で都構想への賛成を訴える大阪維新の会の守島正市議=2020年9月22日、大阪市阿倍野区(恵守乾撮影)
 今でこそ維新が支援者などを動員して説明会を開催しているが、出席者の感想はやはり「分かりにくかったので、賛否は少し考えます」というものが目立つようだ。賛成派はメリットを中心に、反対派はデメリットを中心にしか説明しないため、市民のこの反応は至極当然であるものの、当の議員の態度はまったく変わらない。まさに政策に対する自信のなさの表れと言える。自分たちにとって不利なことを隠したい気持ちは分かるが、正直に包み隠さず話す誠実さも、政治家には必要ではないか。