2020年10月17日 20:32 公開

イギリスと欧州連合(EU)の間で進められている通商交渉が難航している。ボリス・ジョンソン首相はかねて、16日のEU首脳会議(サミット)を交渉の期限としていたが、英首相官邸は同日、「交渉は終わった」と強気の姿勢を示した。

首相官邸の報道官は、EUが通商協定の法的文書について協議する準備をしてこなければ、来週以降に交渉を続ける「理由がない」と発言。イギリス側のデイヴィッド・フロスト首席交渉官も、EUのミシェル・バルニエ首席交渉官に対し、もはや来週以降に協議をする「根拠」がないと告げたという。

首相官邸は、イギリスとEUは来週以降、電話で協議を続けることで合意しているとしている。

一方、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、EUの交渉チームは週明けにロンドンへ向かい、協議を「強化」するとツイートした。

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イギリスとEUは現在、ブレグジット(イギリスのEU離脱)後の通商協定について協議を進めているが、漁業権や企業に対する政府補助金といった主要問題で溝が埋まっていない。

ジョンソン首相は16日朝の会見で、ブレグジットの移行期間の終わる来年からは、通商協定がないままEUと貿易する「準備」が必要だと話した。ただし、協議が決裂したとは言わなかった。

ジョンソン首相は、イギリスはEU・カナダ間の自由貿易協定を手本にした協定を望んでいるが、EU側はそれを真剣に考えるつもりがないと指摘。イギリスは「代替案」を模索しなければならないと述べた。代替案とは、オーストラリアとEUの間の、限定的な内容の協定を意味する。

一方、首相報道官は同日午後の会見で、EUに対して一層厳しい姿勢を示した。

報道官は「バルニエ氏が来週ロンドンに来る意味があるとしたら、何もかもイギリスに預けるのではなく、すべての問題について法的文書をもとに協議を加速させる用意がある場合に限られる。移動や運送の実務についても協議する必要がある」と述べた。

「そうでなければ、来る意味はない」

報道官はさらに、「通商交渉は終わった。EUは交渉の立場を変えたくないと言ったことで、実質的に交渉を終わらせた」と述べた。

イギリスとEUは、ブレグジットの移行期間が終わる12月末までに、「ゼロ関税」の貿易協定を結ぶことを目指している。合意に至らなかった場合、両者間の貿易は世界貿易機関(WTO)のルールに基づくことになり、つまりは通商は関税対象になる。

欧州各国や英野党の反応は

16日のEUサミット終了後、ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、イギリスとEUには通商協定があることが望ましく、双方が譲歩すべきだとの見解を示した。

エマニュエル・マクロン仏大統領は、ブレグジット協定を必要としているのはEUよりもイギリスの方だと話している。

英最大野党・労働党のレイチェル・リーヴス影の内閣府担当相はイギリス政府に対し、「瀬戸際から引き下がり」、「ポーズばかりとるのはやめるべきだ」と述べた。

「国境で関税が課せられたり、手続きの遅延などが起きたりすれば、食品や薬品などの自由なモノの移動が難しくなる」

BBCのジョナサン・ブレイク政治担当編集委員は、イギリスの首相報道官による「交渉は終わった」という発言は衝撃的なものだと指摘。イギリス政府はEUを動かすため、これ以上はないというほど明確な合図を送り、強い語調で次はEUが動く番だと明示したのだと解説した。

一方、ブリュッセル特派員のニック・ビークによると、EU側は英報道官の発言に「まったく感心していない」。

「ジョンソン首相の滑稽劇に巻き込まれることに慣れてきた」と話すEU幹部もおり、同首相が新型コロナウイルス対策に取り組む間、EU相手に時間稼ぎをしているという意見もあるという。

(英語記事 UK's trade talks with EU are over, says No 10