2020年10月22日 11:39 公開

ナタリー・シャーマン、ビジネス担当記者(ニューヨーク)

処方鎮痛剤などに含まれる麻薬オピオイドの中毒を拡大したとして、アメリカで集団訴訟の被告となっている米製薬大手パーデュー・ファーマが21日、米司法省相手に計83億ドルの和解案に合意し、アメリカの「オピオイド危機」悪化に果たした役割について有罪を認めると発表した。ただし、州政府や個人による数千件の訴訟は継続する。

パーデューのスティーヴ・ミラー会長は、「司法省が詳述する問題行動について、深く反省し、責任を受け入れる」と発表した。ミラー会長は2018年7月、同社が訴訟回避のため連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請した直前に、会長職に就任した。

司法省との合意は、パーデューの破産申請を審理するニューヨーク連邦破産裁判所の承認を得る必要がある。司法省と同社の和解についてはすでに、複数の原告自治体が反対しており、法廷はこうした主張を検討することになる。

パーデューを訴えている原告たちは司法省の和解について、同社とオーナーのサックラー一族の責任を免除する内容だと反発している。

アメリカでは1999年以降、パーデューの処方鎮痛剤オキシコンチンをはじめ、麻薬性鎮痛薬オピオイドを含む鎮痛剤が大量に処方されるようになり、中毒者が相次いだ。この「オピオイド危機」によって、40万人以上が死亡している。

「司法省は失敗した」と、マサチューセッツ州のモーラ・ヒーリー州司法長官(民主党)は、和解発表を受けてツイートした。

「この場合の正義とは、真実を明らかにして、責任者に責任をとらせることだ。選挙に勝つため和解成立を急ぐのではなく。私はパーデューやサックラー一族に対してこれでおしまいにしないし、ずっと長いこと正義を求めてきた家族たちを決して裏切ったりしない」と、ヒーリー長官は書いた。

https://twitter.com/MassAGO/status/1318934203443052544?s=20


一方で司法省は、今回の和解の「重要性」を強調。パーデューが国に支払う83億ドルの罰金のほとんどを政府は受け取らず、パーデューの債権者や訴訟原告たちの救済に充てるとしている。

さらに、パーデュー幹部やサックラー一族に対して、ほかに刑事責任を追及する可能性がないか検討を続ける方針という。

「和解したからといって、誰の犯罪が免除されるわけでもない」と、ニュージャージー州のレイチェル・ホーニグ連邦検事は記者会見で述べた。

パーデューは何を

今回の和解に先立ち、アメリカではパーデューなど複数の製薬会社が麻薬鎮痛剤オピオイドを含む薬の過剰処方を奨励したことで、大勢の過剰摂取や依存症を引き起こしたとされている。これによって全米の自治体で医療や警察が過剰な負担を負うことになったと、自治体や連邦政府は主張してきた。

司法省との和解の中で、パーデューはアメリカに対する詐欺に共謀したことを認め、オキシコンチンの販売戦略において連邦法の反キックバック法に違反したと認めた。反キックバック法では、医師等から不適切に有利な扱いを受けるため、取引の見返りに利益の一部を還元することを禁止している。

パーデューはオキシコンチンの処方を医療機関や医師に薦めるとともに、金銭を提供していたとされる。この費用はめぐりめぐって究極的には、公共医療制度が負担することになった。

パーデューは実際にいくら払うのか

パーデューは2億2500万ドルを司法省に払い、さらに他の訴訟で提起された問題への取り組みに17億ドルを支払う。

このほか、刑事罰として35億4000万ドルの罰金と、民事罰として28億ドルの損害賠償金を支払う。破産申請裁判での弁済との調整は未定。

サックラー一族はさらに、2億2500万ドルを支払い、パーデューのオーナーとしての立場を放棄するとしている。

同社は今後、「公共の利益」を目的とする基金が運営する新会社に再編される。政府がかなり大きく関わる形で、同社はオキシコンチンや、その他の依存症治療薬の製造は続けるという。

この内容にパーデューは早くから同意していたが、マサチューセッツ州をはじめ複数の州がこれに反対している。

同社はまた、100億ドルを支払うことで他の訴訟についても和解したい意向だが、和解に反対する自治体や被害者の多くは、同社の解体や、サックラー一族による賠償金の引き上げを求めている。昨年明らかになった裁判資料によると、サックラー家はオピオイド危機への関与の捜査が進む中、2008年から2017年にかけて100億ドル以上をパーデューから引き出して移転している。

サックラー一族は、和解に30億ドルを支払うことで合意している。パーデュー役員だった家族は誰もが「倫理的に合法的に」行動しており、一族による「資産分配のすべては書類上に記載されている」と説明している。

「本日の和解に達したのは、法律手続きを何年も続けるのではなく、支援を必要とする地域社会に相当額の助成金を仕向ける、世界的な解決策を可能にするためだった」と、一族は声明で述べた。

(英語記事 Purdue Pharma to plead guilty in $8bn opioid settlement