2020年10月22日 11:38 公開

フランス・パリ近郊で男性教師が首を切断されて殺害された事件で、被害者のサミュエル・パティさん(47)の追悼式が21日、パリ市内のソルボンヌ大学で開かれた。参列したエマニュエル・マクロン大統領は、パティさんを「静かな英雄」と称賛した。

追悼式には400人が参列したほか、テレビ中継された。

ロックグループ「U2」の楽曲「One」が流れる中、パティさんの棺は近衛兵の肩に担がれて入場。棺の上には、パティさんの死後に授与されたフランスの最高勲章、レジオンドヌール勲章が置かれた。

マクロン大統領は追悼演説で、パティさんは生徒に市民になるための方法を教えていたと話し、「フランスは風刺画や漫画を決して諦めたりしない」と語った。

「パティさんはフランス共和国を体現したから殺された。イスラム過激派が我々の未来を奪おうとしたために殺された。パティさんのような静かな英雄がいる限り、私たちの未来を奪うことなどできないと知っていたからだ」

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事件は16日午後5時ごろ、パリ近郊コンフラン=サントノリーヌの学校、コレージュ・デュ・ボワ・ドルヌの近くで起きた。アブドゥラフ・アンゾラフ容疑者(18)はパティさんの首を切断して殺害し、その遺体の写真などをソーシャルメディアに投稿。かけつけた警官たちにエアガンで発砲し、警官たちに射殺された。

歴史と地理の教師だったパティさんは6日に、生徒にイスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を見せたことがきっかけで脅迫を受けていた。

パティさんは風刺画を見せる前に、ムスリムの生徒に対し、不快だと思うなら教室を出るように指示していたという。

イスラム教ではムハンマドやアラー(神)の偶像崇拝を禁じているため、こうした画像はムスリムにとって深刻な攻撃材料となる場合がある。

アンゾラフ容疑者はチェチェン系でモスクワで生まれ。2008年に難民としてフランスに移住した。対テロ警察は、容疑者をこれまで把握していなかったという。

生徒を使ってパティさんを特定

検察当局は21日、アンゾロフ容疑者がパティさんの身元を突き止めるために、10代の生徒2人に約300ユーロ(約3万7000円)を渡していたことが明らかになったと発表した。

ジャン=フランソワ・リカール対テロ検察官によると、容疑者は生徒に「パティさんを撮影し、預言者の風刺画について謝罪させたい」と話していたという。

これに対し、14歳と15歳の生徒はパティさんの身なりを説明した。その後、アンゾロフ容疑者は2時間以上、学校の外でパティさんを待ち伏せしていた。

当局はこの2人を含めた7人を、この事件との関係で訴追する方針を固めている。

生徒の父親も関与

パティさんをめぐっては、オンライン上でヘイト(憎悪)活動が繰り広げられていたことも判明しており、当局は殺害と「直接的な関連」があったとみている。

この憎悪活動は同校の生徒1人の父親が始めたとみられている。現地メディアで「ブラヒム・C」と報じられているこの父親は、パティさんに対して「ファトワ」(イスラム教の法学者が宗教的な立場から出す勧告や判断)を出していたという。

すでに訴追されているブラヒム・C容疑者について検察は、アンゾロフ容疑者とテキストメッセージのやりとりをしていたことを認めている。

ブラヒム・C容疑者はさらに、パティさんがムハンマドの風刺画を生徒に見せたと知った後、パティさんを非難する動画をソーシャルメディアに投稿していた。

しかしリカール検察官によると、容疑者の子どもはパティさんの授業に参加していなかったため、動画での怒りや非難の内容は「不正確な事実」に基づいていたという。

(英語記事 France’s Macron leads tributes to beheaded teacher