2020年10月23日 14:54 公開

11月3日の投開票日を目前に22日夜、米大統領選挙の最後の候補討論会が、テネシー州ナッシュヴィルで行われた。罵倒の応酬になった1回目と異なり、不規則発言も少なく、ドナルド・トランプ大統領とジョー・バイデン前副大統領は新型コロナウイルス対策や人種差別、移民対策や気候変動、外国政府との関係などについて論戦を交わした。

米NBCニュースのクリステン・ウェルカー記者が司会を務めた今回の討論会では、最初の討論会と異なり、不規則発言ができないように両候補のマイクを司会者が消音できる仕組みになっていた。

投票日に先駆けてすでに4600万人以上が、期日前投票を済ませている。

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新型コロナウイルスについて

冒頭の質問は新型ウイルス対策に関するもので、トランプ氏はアメリカ国民がウイルスと「共に生きる」ことを学んだと発言。するとバイデン氏は「アメリカ人はウイルスで死んでいる」のだと反論し、国民22万人以上が死亡している現状はトランプ大統領の責任だと批判。「国民がこれだけ死んでいるのに『自分は責任を取らない』などと言う人間は大統領であり続けるべきではない」と述べた。

これに対してトランプ氏は、自分は責任をとると述べつつ、「このウイルスが来たのは自分のせいじゃない。中国のせいだ」と反論した。

今後のウイルス対策として、科学者がロックダウンを提言したらどうするかと質問され、バイデン氏はその可能性を否定しなかった。一方でトランプ氏は、感染しても自分も含めてほとんどの人が回復するので、ロックダウン再開は間違っていると反論。

「これ(アメリカ)は巨大な経済の巨大な国だ。大勢が職を失ったり、自殺したりしている。大勢が落ち込み、誰も見たことのないレベルでうつやアルコール、麻薬が広まっている」とトランプ氏は述べた。

トランプ氏はさらに、バイデン政権になれば増税と株価暴落で国民生活は悪化すると繰り返した。

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「誰よりも人種差別をしない」

司会者が、「有色人種の家庭が子供の未来を恐れている理由が理解できますか」と両候補に尋ねると、バイデン氏は「もちろん。アメリカには構造的な人種差別がある」と答えた。

トランプ氏も「もちろん分かる」と答えた上で、「この部屋にいる誰よりも、自分は人種差別をしない人間だ」と答えた。

トランプ氏は、バイデン氏が上院議員として立案にかかわった1994年の犯罪法を取り上げて、バイデン氏を非難した。「Black Lives Matter(BLM、黒人の命も大切)運動の活動家たちは、「三振法」などと呼ばれるこの「暴力犯罪取締り及び法執行法」が、多数のアフリカ系アメリカ人の収監につながったと批判している。

一方でバイデン氏はトランプ氏を「この国の現代史で最も人種差別的な大統領のひとりだ。ありとあらゆる人種差別の炎に油を注ぐ」と反論し、「この人は霧笛みたいに巨大な(人種差別を呼びかける)犬笛の持ち主だ」と述べた。


親と引き離された子供たち

メキシコとの国境を越えてアメリカに入ろうとする親子を米移民当局が引き離し、500人以上の子供が今なお親と再会できず、親の居場所も分からない状態だとされる問題について司会者が質問すると、トランプ氏は子供たちはカルテルや「コヨーテ(人身売買組織の意味)」に連れられて国境を越えてくると回答。さらに、収容された子供たちは今は「おり」ではなく、「清潔な施設できちんと面倒をみてもらっている」と答えた。

また、オバマ政権も不法移民の子供を収容していたと反論し、「ジョー、誰がおりを作ったんだ」と繰り返した。トランプ政権下で大勢の子供が収容された金網の囲いは、オバマ政権において作られたもの。

これに対してバイデン氏は、親子を引き離していまだに再会のめどが立たないのは「犯罪」だと非難し、「この国は世界中の笑われ者だ」と述べた。さらに自分が大統領になった場合は、幼児としてアメリカに違法入国させられた人は、速やかに市民権を得られるよう制度を復活させ整備すると約束した。

トランプ氏はさらに、バイデン氏が移民制度の現実を理解していないと批判。拘束した不法移民をいったん釈放し、後日の審判のため出廷するよう命令するオバマ政権の対応について、「とてもIQの低い相手にしかうまくいかない」と述べた。

北朝鮮

トランプ氏は、北朝鮮との歴史的な首脳会談を実現したことについて、自分が金正恩朝鮮労働党委員長と「うまくいっている」おかげだとして、オバマ政権は会いたくても会えなかったと批判。

これに対してバイデン氏は、「この人は北朝鮮を正当化した。仲良しの話をしたが、その仲良しはごろつきだ」と非難。トランプ氏が「外国の指導者と良好な関係だというのは良いことだ」と反論すると、「まるで欧州侵攻前のヒトラーとうまくいっていたと言うようなものだ」と述べた。

オバマ政権時の状況については、北朝鮮に厳しい条件をつきつけていたため、交渉が実現しなかったのだと反論した。

外国での汚職はあったのか

トランプ氏は、感染予防のためバイデン氏が夏にかけて遊説を控えていたことをあてこすり、「君はどこからか大金を得ているから、自宅の地下室にずっとこもっている余裕があったが、ほとんどの人には、僕にも、そんなことをしている余裕はない」と述べた。

トランプ氏はバイデン氏がオバマ政権の副大統領として、本人や家族が諸外国から巨額の資金提供を受けていたという裏付けのない情報を繰り返し主張。バイデン氏はいずれも否定し、「これまで外国から一銭たりとも金を受け取っていない。人生で一度もない」と反論した。

一方でバイデン氏は、トランプ氏の財務状況に関する米紙ニューヨーク・タイムズの一連の報道に言及し、トランプ氏を批判。同紙は、トランプ氏が2016年に納税した連邦所得税はわずか750ドル(約8万円)だったのに対して、中国に銀行口座を持ち現地で18万8561ドル(約2000万円)を納税していると報道した。

「自分は過去22年分の納税記録を公表したが、この人はいまだに公表していない。何を隠しているんだ」とバイデン氏が批判すると、トランプ氏は用意ができればすぐにでもするし自分は何百万ドルも納税してきたと反論。これに対してバイデン氏は、もう何年も同じことを言っているが納税記録を公表していないと指摘した。

中国での口座についてトランプ氏は、「自分はたくさんの銀行口座を持っているし、全て公表されていて、あらゆるところにある。自分はビジネスをするビジネスマンだったんだ」と説明した。

バイデン氏の息子、ハンター・バイデン氏が、オバマ政権時代にウクライナのエネルギー会社ブリスマの役員だったことについて、トランプ氏が批判を繰り返すと、バイデン氏はこれに反論。

「倫理違反は何一つなかった」とバイデン氏は述べた。オバマ政権でバイデン氏は、対ウクライナ関係で中心的役割を果たしていた。

医療、エネルギー、気候変動

トランプ氏は、バイデン政権になれば医療が公営化されてしまうとして、「医療費負担適正化法」(通称オバマケア)を完全に廃止して、既往症のある人も保険に加入できる「美しい案」をまとめていると述べた。

これについてバイデン氏は「同じことをもう4年も繰り返しているが、一向に案が出てこない」と非難。また、自分が長くかかわってきた社会保障制度やメディケイド(高齢者用公的医療保険)について、「この人が自分に説教するなんて、とんでもない話だ」と述べ、自分はオバマケアを改善していくと約束した。

トランプ氏は、「ああするこうすると色々言うが、なぜ自分が副大統領だった8年間にそうしなかったんだ」と繰り返し批判した。

エネルギー政策については、トランプ氏はアメリカが「どこよりも空気も水もきれいだ」として、さらにインドやロシアは「不潔だ」と述べた。

代替エネルギーについては、トランプ氏は「君より自分の方が風について詳しい。非常に高いし、鳥をみんな殺してしまう」として、風力発電に否定的な発言をした。

さらにトランプ氏が「石油産業を閉めるつもりか」とバイデン氏に問いただすと、バイデン氏は「石油産業を徐々に移行させる。石油産業による環境汚染は深刻だからだ」として、アメリカのエネルギー使用を徐々に再生可能エネルギーへ移行させると述べた。

「つまり石油産業を全滅させると言っているわけだ」と、トランプ氏は指摘。「忘れないよね、テキサス? ペンシルヴェニア、オクラホマ、オハイオ?」などと、石油・石炭産業が重要な基盤となる激戦州を列挙した。

バイデン氏がフラッキング(地下の岩石層に高圧で流体を注入して亀裂を生じさせ、石油やガスを採掘する水圧破砕法)に反対したかどうかでも応酬があった。トランプ氏はバイデン氏がフラッキングに反対していると繰り返す一方、バイデン氏は「連邦政府の国有地では反対だと言った」のだと強調した。

自分に投票しなかった人に就任式で

予定の90分間を大きく超えた討論会の最後に司会者は、自分が当選したとして、来年1月の就任式では自分に投票しなかった人に何を言うかと質問。

トランプ氏は「中国から疫病が来る前のように、この国を成功させる」、「成功によってみんなをまとめる。私たちは成功に向かっている」と答えた。

バイデン氏は、「自分はアメリカ人全員の大統領だ、と言う」と答えた。さらに、「私に投票したか私に反対したかに関わらず、私は皆さんの代表です。皆さんに希望を提供します。作り事より科学を優先させ、恐怖より希望を優先させます」と、就任式で述べるつもりだと話した。

(英語記事 US Election 2020: Trump and Biden row over Covid, climate and racism / Final Debate Clash