大峰光博(名桜大人間健康学部准教授)

 東海大硬式野球部に所属する複数の部員による寮内での薬物使用疑惑に対し、東海大は同部を無期限活動停止の処分とした。今月5日には、近畿大サッカー部の男子5人の大麻使用も明らかになり、近畿大も同部の無期限活動停止処分としたばかりだ。

 日本における運動部活動では、部員による事件が発覚した際には、当該部が自主的に活動を休止にしたり、学校から活動を停止させられたりするケースがある。さらには、加入しているスポーツ団体から対外試合禁止処分を受けることもある。

 そこで、本稿では薬物使用に限定せず、部員による不祥事が生じた際の運動部活動における連帯責任の在り方について論じたい。

 連帯責任の是非についてメディアで取り上げられる機会が多いのは、高校野球だ。現在も部員による不祥事が発覚した際には、基本は連帯責任となる。

 日本学生野球協会は3月、部員による暴力や暴言、器物破損があった吉井高校(群馬)の野球部に対し、3カ月間の対外試合禁止処分とした。ほかにも部員による部内暴力があった佐野日大高校(栃木)、三潴高校(福岡)、東大阪大柏原高校(大阪)に、3カ月間の対外試合禁止処分としている。

 『体罰の研究』や『校則の話』の著者である教育評論家の坂本秀夫は、高校野球において連帯責任を課すのは前近代的な支配関係が残っているためであり、野蛮な現象であると主張した。自身の行為にだけ責任を持ち、他人の行為には責任を持たないことが近代法の常識であるという。

 日本弁護士連合会(日弁連)もまた、スポーツ界で見られる連帯責任の考え方は、競技者の権利侵害につながると指摘しており、連帯責任を課すことには否定的な意見が少なくない。

 このような風潮に呼応するように、近年の高校野球では、複数部員による組織的な関与が認められない場合、原則として処分は当事者にとどめられチームの責任は問われない方向にシフトしている。

 しかしながら、筆者は、連帯責任は前近代的な支配関係の残存であり、野蛮な現象であると切り捨てることはできないと考える。不祥事を防止するためには対外試合禁止処分が必要であるといった意見や、高校野球は教育の一環であることから対外試合禁止処分を課すことも必要であるといった、連帯責任を肯定する意見も存在する。
硬式野球部員の違法薬物使用で謝罪する東海大の山田清志学長(左から2人目)=2020年10月17日、神奈川県平塚市(斎藤浩一撮影)
硬式野球部員の違法薬物使用で謝罪する東海大の山田清志学長(左から2人目)=2020年10月17日、神奈川県平塚市(斎藤浩一撮影)
 そもそも、連帯責任に関する研究は、日本だけでなく、海外の研究者によっても試みられてきた。連帯責任である「collective responsibility」の是非に関しては、少なくない研究成果が存在する。

 中でも、フィンランドのトュルク大の政治哲学者、ユハ・ライッカや英オックスフォード大の政治学者、デイビッド・ミラーの研究は、連帯責任を考える上で示唆に富んでいる。両者を参考にすると、以下の3つの条件が満たされているにもかかわらず、当該行為に対して反対の行動をとらない場合は連帯責任が問われる。


①深刻なリスクなしに、反対する機会を持っている。

②容易に入手できる知識によって、反対する機会を持っている。

③反対することが完全に無益なものでなく、何らかの貢献できる見込みがある。

 この3条件から、部員による薬物使用の事例について検討したい。これまでに薬物使用が発覚した運動部において、すべての部員が薬物使用を行っていたという事例は稀有であろう。