2020年10月24日 12:23 公開

ポーランドの憲法裁判所は22日、胎児に障害があった場合の人工妊娠中絶を違憲とする判決を下した。

ポーランドの中絶関連法は欧州でも最も厳格な部類に入るが、今回の判決により、ほぼすべての中絶が禁止されたことになる。

この判決が法制化されれば、人工中絶が認められるのは、強姦や近親相姦による妊娠だった場合、また母親に命の危険がある場合にのみ限られる。

人権擁護団体は、中絶に関する制限を広げないよう政府に訴えている。

欧州評議会のドゥーニャ・ミヤトヴィッチ人権委員長はツイッターで、「女性の人権にとって悲しい日になった」とコメント。

「ポーランドでほぼ全ての中絶の根拠を排除したことは、中絶禁止とほぼ同じで、人権を侵害している」と述べた。

<関連記事>

ポーランドでは1993年、胎児に重篤な障害があった場合の妊娠中絶を認める法律が制定された。ポーランドで合法的に行われる中絶の98%が、胎児の障害を理由にしている。与党「法と正義」の所属議員は昨年、この法律が違憲だとして提訴した。

憲法裁判所の判事の大半は、「法と正義」党が任命している。

ヘルシンキ人権財団のマルゴーザタ・スレカ弁護士はBBCの取材に対し、「これは女性の非人道的な扱いにつながる、完全に不当な決定だ」と批判した。

ポーランドの女性の性と生殖に関する権利活動家のアントニーナ・レワンドウスカ氏は、1993年の中絶法は、国連の拷問を禁止するルールにのっとって作られたものだと説明した。

「ポーランドで行われる中絶手術の98%が胎児の障害に起因するものなのに、そのまま女性に妊娠を継続させるのは非人道的で卑劣だ」

アムネスティー・インターナショナルやヒューマン・ライツ・ウォッチ、センター・フォー・リプロダクティヴ・ライツといった国際人権団体も共同声明で、「政府が繰り返し女性の権利を攻撃し、生殖に関する権利を後退させようとしている。さらに、ポーランドの司法の独立や法治主義が損なわれている」と非難している。


<分析>この決定がポーランドにもたらすもの―― アダム・イーストン・ワルシャワ特派員

ポーランドで行われる合法的な中絶のほとんどが、胎児の障害を理由としている。つまり、今回の憲法裁の決定は、実質的な中絶禁止を意味する。

ポーランドは欧州でも特にキリスト教カトリックの影響が強い国のひとつだが、中絶禁止を求める強い世論の声はなかった。世論調査では長年にわたり、ポーランド国民の明確な過半数が、中絶規制の厳格化に反対していた。

一方で、教会の司教やカトリックの団体が、与党「法と正義」に規制の厳格化を求めていた。「法と正義」は伝統的なカトリックの価値観を支持しているが、法改正は容易ではなかった。改正反対の声は議会でも世間でも出ていた。2016年には規制強化に反対し、女性を中心に10万人が抗議デモに参加した。

「法と正義」と極右政党の議員らはパンデミック以前の昨年末、この問題を裁判所に委ねることにした。憲法裁の判事の大半は「法と正義」によって任命されているため、都合が良かったのだ。激しく感情的な審議で議会が混乱する事態も、世間の怒りも避けられるはずだった。

ポーランドでは現在、ほとんどの大都市で集会人数が10人に制限されている。今回の決定に反対する人は、他の方法で怒りを表明しなくてはならない。

ポーランドで昨年行われた合法的な中絶はちょうど1000件強だった。

一方で、女性の人権団体によると、毎年推定8万~12万人のポーランド人女性が国外で中絶手術を受けているとみられる。たとえ法的に中絶が認められる場合でも、ポーランドでの手術には難題が多いからだ。それだけ人工中絶は、ポーランド社会で忌避されているのだ。


(英語記事 Poland bans almost all abortions