田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 10月26日から臨時国会が召集され、そこで菅義偉(すが・よしひで)内閣発足後初めて、本格的な国会論戦が始まることになる。

 新型コロナ危機で落ち込みの激しい経済状況の立て直し、そして欧米で急拡大する感染拡大への警戒も必要だ。まさに「国難」に直面している。

 政府と議員たちとの国民にとって実のある論戦が期待されるのは当然だ。だが、マスコミ各社は総じて日本学術会議の問題が取り上げられると報道する。

 改めて言うまでもないが、 日本学術会議問題とは、同会議の会員候補6人の任命が拒否された問題である。同会議は政府の組織であり、その会員は非常勤の特別職の国家公務員である。

 いわば非常勤の公務員に候補となった6人がなれなかっただけの問題を、あたかも菅総理が独裁者であるかのように、「学問の自由の侵害」と騒いでいるのが実情だ。

 日本学術会議は、そもそも政府に対して政策提言を行う組織である。大学や教育機関で議論される「学問の自由」とは異なり、政府のための政策提言作りがその職務になる。個々の会員の研究活動はそれぞれが自由にやればいいだけで、誰もその自由を侵していない。単に当該組織とご縁がなかったということだけである。

 不況による就職難で、会社から不採用をもらって失業状態が続き、その人が困窮に陥れば、社会的な問題につながる重大な面がある。しかし、この日本学術会議会員の不採用には、そのような就職難や生活苦に結びつく側面はない。採用されれば多少の報酬は出るが、それを目的にしている人はさすがにいないと思う。

 むしろ、こんなくだらない問題よりも、日本が今直面している雇用危機の方がよほど大事な問題である。日本学術会議問題のような、問題以前でしかない話題に国会の時間を浪費するのは本当に愚かしい。
衆院本会議で就任後、初の所信表明演説を行う菅義偉首相=2020年10月26日、国会(松井英幸撮影)
衆院本会議で就任後、初の所信表明演説を行う菅義偉首相=2020年10月26日、国会(松井英幸撮影)
 日本学術会議は政府の一組織である。民主的統制が必要になるのは当たり前である。内閣府も2018年11月、学術会議の推薦通りに任命する義務は内閣総理大臣にはない、としている。