リングダール裕子(ベルゲン大常勤講師、日本語・ノルウェー語教師)

 北欧というと、まず何よりも高福祉制度で知られ、幸福度についても世界でトップクラスを誇っている。それに加え女性の政界進出も少しずつ注目を浴びるようになってきた。

 北欧諸国のどの国も三権分立に基づいており、政治家の汚職も世界で一番少ない。そもそも北欧における政治制度は、他のヨーロッパ諸国よりも社会派民主主義に基づいている。

 理由として挙げられるのが、19世紀におけるマルクスの「資本論」、そして1848年革命の思想がきっかけとなり、次第に社会派民主主義が築かれてきた。また、20世紀初頭には労働組合の大規模な政治活動などが起こっている。

 そのような情勢の中、女性の権利向上のための運動がさまざまな意味で起こり、普通参政権を要求するようになってきた。そして参政権取得後に、女性が少しずつ政界に進出してきたのだ。

 昨年12月、フィンランドで34歳という若さの女性首相、サンナ・マリン氏が誕生した。しかも首相を含む4人の女性大臣たちは、皆30代という若さである。他の北欧を見ても、現在のデンマーク首相(42歳)やアイスランド首相(44歳)も女性だ。

 また、私の住むノルウェーでは、もし現在のアーナ・ソルベルグ首相(女性)がコロナ感染などで、一時的に自宅隔離という状況になった場合、現在の貿易・産業大臣のイセリン・ニーブー氏(女性38歳)がソルベルグ氏の代行として首相になるそうだ。

 さらに、最近、子供・家族大臣のチェル・インゴルフ・ロプスタ氏(男性)の育児休暇のために、当時27歳であったイダ・リンバイト・ローセ氏(女性)が代行を受け継いでいる。

 では、なぜ北欧ではこのように多くの女性が、しかもその中にかなり若い女性が年上の男性と肩を並べ、政界で活躍しているのだろうか。北欧の高福祉制度と男女平等は単なる偶然なのだろうか。
2020年5月4日、新型コロナウイルスについて、女性閣僚とともに記者会見するフィンランドのサンナ・マリーン首相(中央)(ロイター=共同)
2020年5月4日、新型コロナウイルスについて、女性閣僚とともに記者会見するフィンランドのサンナ・マリン首相(中央)(ロイター=共同)
 まず、北欧における性の平等の政策は、何よりも家族政策と結びついている。歴史を振り返ると、北欧も昔は家族の世話をしたのは女性であった。しかし、女性の権利が向上するに伴い、女性の就労は当たり前になってきた。

 現在では両親が共に仕事を持てるということが基本であり、それに伴い保育所施設の充実が重要であることは言うまでもない。また、病気やけがの場合の保証も必要である。家庭によっては男性だけが仕事をしている場合もあるが、その男性が病気になれば、それを補う必要がある。その後、子供や老人のための福祉制度も、国家を通じて保証されるようになった。