
2020年10月29日 13:23 公開
トルコ政府は28日、レジェプ・タイイップ・エルドアン大統領の風刺画をフランスの週刊紙「シャルリ・エブド」が掲載したことを受け、「法的・外交的な措置」を取ると発表した。
シャルリ・エブドの最新号の表紙には、エルドアン大統領がヴェールをかぶった女性の服をまくり上げている絵が使われている。
トルコの国営メディアは、トルコの検察当局がシャルリ・エブドに対する公式な捜査を開始したと発表した。
フランスでイスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を生徒に見せた教師がイスラム過激派の男に殺された事件をきっかけに、フランスとイスラム教徒(ムスリム)の多い国の間で緊張が高まっている。
エマニュエル・マクロン仏大統領はこの教師の追悼集会に出席した際、「フランスは風刺画を諦めない」と発言。また、イスラム過激派への対応を厳格化すると述べた。
これに対し、バングラデシュやクウェート、ヨルダン、リビアなどではフランス製品のボイコット運動や抗議デモが起きている。エルドアン大統領もフランス製品のボイコットを呼びかけている。
イスラム教では偶像崇拝が禁止されており、ムハンマドやアッラーの描写はムスリムにとって非常に侮辱的な行為になり得る。
一方、フランスは世俗主義を掲げており、特定のコミュニティーのために表現の自由を損なうことはできないとしている。
<関連記事>
シャルリ・エブドのエルドアン大統領の風刺画は、トルコ政府を怒らせている。
大統領の報道官は、「シャルリ・エブドはトルコの大統領について、風刺画という名の卑劣な画像を出版した。文化的人種差別とヘイト(憎悪)を拡散させるこの許しがたい行いを非難する」と述べた。
フアト・オクタイ副大統領は、国際社会に「この恥辱」を非難するよう呼びかけ、ツイッターに「思考の自由に隠れて人をだますことはできない」とツイートした。
トルコの親政府派の風刺雑誌「Misvak」は、マクロン大統領とシャルリ・エブドについての風刺画を掲載して反発している。
エルドアン大統領はまた、オランダのヘルト・ウィルダース議員がエルドアン氏の風刺画をツイッターに公開した件についても、法的措置を取るとしている。
この風刺画では、エルドアン大統領が爆弾の形をしたトルコ帽をかぶっており、ウィルダース議員はそこに「テロリスト」と説明を入れていた。
オランダのマーク・ルッテ首相はウィルダース議員の行動を擁護しており、「エルドアン大統領へのメッセージは簡単だ。オランダでは表現の自由が最も高い価値観のひとつだ」と述べた。
フランスへの反発広がる
マクロン大統領の一連の発言は、多くのムスリムにイスラム教やムハンマドへの攻撃と捉えられ、怒りと反発を招いている。
各国でフランス製品のボイコット運動や抗議デモが起きており、フランス政府はインドネシアやイラク、モーリタニアに滞在する国民に対して注意を呼びかけている。
バングラデシュでは28日、首都ダッカの国立バイトゥル・ムカッラム・モスクで行われた反フランスデモに数百人が参加。デモ参加者らはマクロン大統領を模した人形を焼いて抗議した。
マレーシアでは、イスラム教団体が商店からフランス製品を撤去するよう求めている。ヨルダンやカタール、クウェートといった中東諸国でも同様の動きが出ている。
エジプトのアル・アザール大学では、イマーム(イスラム教指導者)が「反ムスリム」活動を違法とするべきだという嘆願書を発表した。同国のアブドゥル・アル・シシ大統領は28日、15億人から反感を買う表現の自由はやめるべきだと述べた。