上西小百合(元衆院議員)

 まさに「露と消えにし我が身」といったところだろうか。

 大阪維新の会(国政政党は日本維新の会)が掲げる「大阪都構想」の是非を問う住民投票は11月1日、投開票が行われたが、5年前と同様、再び僅差での反対多数で否決となった。

 維新代表の松井一郎大阪市長はこの結果を受け政界引退を表明し、代表代行の吉村洋文知事は「大阪都構想に再挑戦することはもうありません」と述べた上で、自身の進退については「満了前に判断したい」と言葉を濁した。

 開票日直前まで各メディアによる世論調査は賛否が拮抗(きっこう)し、最後まで全く結果の予想できない状況であった。最終の投票率は前回より4・4ポイント下がったものの、10月31日時点の期日前投票者数は前回より約6万人増だったことから、大阪市民がより真剣かつ深刻に、大阪都構想によって生じる大阪市への影響を考え、行動を起こしたということだ。

 しかし、議員らからなされる説明はお粗末で、賛成派は「二重行政を解消します」と言い立て、一方の反対派は「賛成派はありもしない二重行政をあるように見せかけ、大阪市を廃止しようとしている」と終始主張していた。

 双方の意見を聞いて、正直「どっちやねん!」とツッコミたくなるような非常に分かりにくいものであった今回の住民投票だったが、明るい大阪市の未来を願って貴重な1票を投じられた大阪市民の皆さんには「お疲れ様でした」と申し上げたい。

 そしてコロナ禍での大変な時期に、大阪市民をある意味で政治家の闘争に巻き込み、多額の税金を投入しての住民投票の実行を推し進めた議員らには猛省を促したい。特に大阪維新の幹事長は「コロナ禍で(都構想を)訴えるのが大変だった、理解を深めるのが難しかった」というような総括をしていたが、こんな時期に無責任に住民投票を行ったのは誰なのかと問いたいものだ。

 維新の前代表であった橋下徹氏が「住民投票は1回限り」と大阪市民に訴え、金輪際行わないはずだった住民投票をゴリ押しで2回目に持ち込んだのだから、大阪都構想を推進した維新は負けるわけにはいかない、全身全霊をささげての闘いだった。そのエネルギーは本来ならむしろ、コロナ対策に向けるべきではあったが。

 さらに事前の世論調査で賛成派が反対派に押されていると分かると、維新は公明の山口那津男代表に大阪入りの応援演説を依頼したとも言われている。

 これは「俺たちに逆らえば、公明の大阪の地盤に候補者を立てるからな」という維新の強圧的な態度が一転し、なりふり構わない、プライドを捨てての奮闘ぶりを見せた。

 ただ、公明との交換条件が存在しないとは到底考えられないので、維新は今後、大阪の衆議院小選挙区で公明の地盤に候補者を擁立することはないに違いない。

 つまり維新は次回以降、大阪で大きく衆議院の議席を伸ばす可能性は低くなった。そして、都構想が否決されたことにで、全国的な支持層拡大も壊滅的であろうし、大阪以外の維新所属議員らが離脱していく可能性も大いにある。維新に代わって大阪の自民が矛先を公明の選挙区に向け、衆院候補者擁立を企てる可能性もあるだろうが、これは自民党本部から怒られて実現しない。しかも、今回公明支持層は賛成票反対票がほぼ半分ずつで、結果として公明は維新にも自民にもうまく立ち回ることができている。良いポジションをしっかり持っていくいつもの公明党にはちょっと感心してしまう。

 松井代表お気に入りの落選議員が税金で本部で雇用され、そんなお友達メンツで「大阪府民は何が何でも維新が好きやから」とあぐらをかいて運営を進めているような維新とは異なり、公明には強いブレーンがいるのであろう。
否決が確実となり、会見冒頭で頭を下げる(左から)大阪維新の会代表代行の吉村洋文知事と同代表の松井一郎大阪市長=2020年11月1日、大阪市北区(鳥越瑞絵撮影)
否決が確実となり、会見冒頭で頭を下げる(左から)大阪維新の会代表代行の吉村洋文知事と同代表の松井一郎大阪市長=2020年11月1日、大阪市北区(鳥越瑞絵撮影)
 一方で都構想の反対派も前回の住民投票時の活動よりは、市民の反応を見ながら人々が気になっている部分を簡潔に説明していくなど、戦略的には巧みだった。

 ただ、課題として、いつでも反対派はヒステリックに映ってしまうので、ここは今後の野党の改善ポイントになるだろう。議員が感情的になればなるほど、国民の大部分を占める無党派層はその圧についていけず傍観者側に回ってしまい、同調にはつながりにくくなる。

 だからこそ私は議員時代、国会でプラカードを掲げる野党国会議員に「せっかく良い問題提起をしていても、その行為に国民が引くからやめてほしい」とツイッターで意見を表明したことがある。偶然か功を奏したかは定かではないが、その後いったんは国会内でのプラカード掲示はなくなった。