2020年11月02日 9:29 公開

アンドレアス・イルマー、BBCニュース

ドナルド・トランプ氏はアメリカ大統領として、国際社会の支持を積極的に歓迎するタイプでは決してない。

「アメリカ・ファースト」という国家主義を公然と追い求め、世界の大半をあからさまに侮辱してきた。欧州諸国の指導者を無能呼ばわりし、メキシコ人を強姦犯と呼び、揚げ句にはアフリカ大陸全体を見下した。

ところが中国という共通の敵がいるアジアの国々には、トランプ氏を支持する人たちがいる。

香港:「中国共産党を攻撃できるのはトランプ氏だけ」

香港は民主化を求める大規模な反中国デモをきっかけに、中国政府による厳しい取り締まりに直面している。香港での反政府的な動きを取り締まる中国の「香港国家安全維持法」が6月30日に施行され、香港独立論者や中国の支配を損なうような行動をとる人たちが処罰対象となった。

「4年前にドナルド・トランプ氏が大統領に当選した時には、アメリカが狂ってしまったと思いました」と、エリカ・ユエンさんはBBCに話した。「私はずっと民主党支持者だったので。でも今はトランプ氏を支持しています。香港の抗議者の多くも同様です」。

活動家で実業家でもあるユエンさんは、香港にとっての最優先事項は「中国共産党(CCP)を強く攻撃」してくれる米大統領を獲得することだと話す。「香港の抗議者が望んでいるのは、それだけ」だという。

こうした期待感は、とりわけ香港問題に関してトランプ氏が声高に中国を非難していることからも、高まっている。

トランプ氏の在任中、米議会は香港にはもはや「自治権」がないとして、これまで香港に特別な経済的待遇を与えてきた優遇措置の廃止を承認した。さらに香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官や、香港と中国の高官10人に制裁が科された。

11月3日の米大統領選でトランプ氏と争う野党・民主党のジョー・バイデン大統領候補もまた、香港に対する行動について中国を「罰する」と誓っている。バイデン氏が中国の習近平国家主席を「thug(悪党、ごろつき)」と呼んでいることは有名だ。

だがユエンさんにとっては、トランプ氏とバイデン氏は違う。「CCPは、世界にとって有害な存在だと最初に判断した」のはトランプ政権だったのが、大事なのだ。

「(民主党の)オバマ政権やクリントン政権はなぜそのことに気付かなかったのか、私には分かりません。あまりに浅はかで、CCPが民主主義の道を選んで近代社会を実現すると考えていたんです。でもそうではないと、証明されました」

香港は米中対立の経済的な余波を受けやすい。それはユエンさんも承知している。

「香港を傷つけずにCCPを痛めつけることはできない」とユエンさんは言う。「それでも私たちは短期的な苦しみを受ける覚悟ができているし、犠牲を払うことはいとわない」。

ユエンさんは香港の大半の活動家、特に若者は自分と考えが同じだと話す。しかし、複数の世論調査によると、トランプ氏に対する香港住民の評価にはかなりばらつきがある。直近の調査では、調査対象者のほぼ半数がトランプ氏に「低評価」を付けた。米政府のパンデミック対応が、トランプ氏の評価に影響したという意見が多かった。

台湾:「頼れる兄貴分」

中国と台湾の緊張状態は高まっている。両者は1940年代の内戦で分断されたが、中国政府はいずれ台湾を奪還すると、必要であれば力ずくでそうすると主張している。米政府は両者の長分断について、平和的に解決しなくてはならないとしている。

アメリカによる対中関税や制裁に感銘を受ける人は、台湾にもいる。

「ドナルド・トランプ氏の(中国に対する)姿勢は私たちにとって有益だし、あれほどの同盟国がついてくれるのは良いことです。外交や軍事、貿易面においてさらに自信が持てるので」と、Eコマース(電子商取引)業界で働くヴィクター・リンさんは、台湾からBBCの取材に応じた。「頼れる兄貴分がいる感じです」。

トランプ氏は確かに台湾との交流を拡大している。ここ数カ月では両政府が2国間貿易協定の締結にむけて大きく前進している。

アメリカとの貿易協定が実現すれば、台湾は中国への強い依存状態から脱却できると、リンさんは考えている。「アメリカ国内に台湾の大企業の工場を積極的に誘致する」までに至る可能性があると。

バイデン氏の場合、中国政府が強く反発すれば「(トランプ氏ほど)挑発的」な措置は取らないかもしれないと、リンさんは不安に思っている。バイデン氏は昔から、中国と関係を築くべきだという姿勢で知られる。最近になってバイデン氏は立場を転換したが、中国の「侵略」が迫っていると恐れる多くの台湾人には届いていない。

台湾を軍事的に支援するためのトランプ氏の対応もまた、台湾でのトランプ氏支持を強めている。実際に最新の世論調査では、台湾がトランプ氏の再選を強く望む人の数がバイデン氏の勝利を望む人を上回っている唯一の国であることが示された。

中国政府はこれに強く反発。「中米関係の深刻なダメージを回避するために、『台湾独立』派に誤ったシグナルを送らない」よう、アメリカ側に警告している。

ヴェトナム:「無謀なまでに勇敢」

米中両政府には過去50年間に、ヴェトナムの領土で争った歴史がある。アメリカがおおむね許されてきた一方で、東南アジアの国ヴェトナムは依然として「中国の脅威」を恐れている。

ジャーナリスト兼ビデオ・ブロガーのリン・グエンさんによると、ヴェトナムのトランプ氏支持者たちは2つのグループに分類されるという。

1つは、単にエンターテインメント性や華々しさが理由で、トランプが好きな人たち。そして、多くの香港人や台湾人と同様に、トランプ氏が中国とヴェナムの共産党政権に対する唯一の砦(とりで)だと信じてアメリカ政治の動向を追う「強硬なトランプ氏支持者」だ。

トランプ氏とバイデン氏はいずれも、ヴェトナムに関連する戦略は明らかにしていない。それにトランプ氏は、他国の対立や紛争への介入を急ぐつもりはないとの姿勢を非常に明白にしている。

それでも、政治活動家グエン・ヴィン・フーさんのように、一部の人たちはトランプ氏のような「無謀なまでに勇敢で、攻撃的でさえある」人物が実際に変化をもたらすことができると信じている。

「それこそが、トランプ氏が歴代大統領と一線を画す理由だ。中国との交渉にはこういうタイプの人材が必要だ」

トランプ氏が大統領に就任した際、ヴィンさんは世界がようやく「中国の危険性」や「共産党の国家資本主義の新しい形態に気付いた」と感じたという。

しかしその一方で、共産主義的な一党独裁から脱却し、ヴェトナム国内での経済的・政治的改革を求める声もある。

ヴィンさんは個人的には、アメリカのCCPに対する強硬姿勢が地域全体に波及し、最終的にヴェトナム政府まで到達することを期待している。

日本:「自分たちの国家安全保障に関わる」

日本は長年、アメリカにとって貴重なパートナーであり同盟国であると考えられてきた。しかしトランプ氏が大統領に当選すると、多くの人が彼が掲げるアメリカ第一主義が各国との関係に与える影響に神経をとがらせた。トランプ氏は就任後すぐに環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱。日本が駐留米軍の費用をさらに負担しなければならないと主張している。

「ドナルド・トランプ氏は私たちの味方です。日本が同氏を支持する最大の理由は、国家安全保障です」と、ユーチューバーの「ランダムヨーコ」さんは言う。

ヨーコさんは、中国軍の航空機や船舶が頻繁に日本の領空や領海に侵入していることを指摘する。こうした事案の大半は日本と中国が領有を主張する尖閣諸島周辺で発生している。中国は釣魚島と呼んでいる。

「私たちはまさに、攻撃的に中国と闘えるアメリカの指導者を求めています」、「あそこまで、はっきり言いたいことが言えて、あれほど強い存在感を示せる人はほかにいないと思います。本当にドナルド・トランプ氏じゃないといけないんです」

さらに日本について、中国政府に対抗するための支援をアメリカに頼るアジアの国や地域と準同盟関係にあると考えている。

しかし、トランプ氏がホワイトハウスにとどまることを熱烈に支持するランダムヨーコさんのような支持者は、日本では少数派だ。日本では一般的に、アメリカについて肯定的な意見が共有されることがほとんどだ。だが、トランプ大統領に信頼を寄せているのは日本人の4分の1にすぎない

一部のアジア諸国とは異なり、日本人の多くはバイデン氏に期待している。トランプ氏とは異なる方法で同盟国との関係を築き、TPPに復帰し、経済面と軍事面の両方で日本政府とより緊密に関わってくれると信じて。

(英語記事 Why some Asians are rooting for Trump to win