2020年11月09日 12:28 公開

米大統領選の勝利演説から一夜明けた8日、ジョー・バイデン次期大統領の側近チームは、新型ウイルス対策を最優先事項とするなど、新政権発足を見据えた計画を発表した。一方、ドナルド・トランプ大統領は、選挙結果を争う姿勢を取り続けているが、情報の取り扱いについて混乱もみられる。

バイデン氏のチームはこの日、政権移行計画における最初の取り組みを発表。新型ウイルスの検査を無料化して増やすとともに、国民に自宅外でのマスク着用を呼びかけるとした。また、州知事ら各地の自治体当局に、マスク着用の義務化を進めるよう求めるとした。

さらに9日朝には、医療や公衆衛生の専門家を集めてパンデミック対策を助言する諮問グループのメンバーを発表した。米政府当局で新型ウイルスのワクチン開発を主導していたものの、トランプ大統領の対応に懸念を抱き、保健福祉賞監察官に問題を指摘したところ、更迭されたと議会証言していたリック・ブライト氏も諮問グループの一員となった。

この発表から間もなく、米製薬大手ファイザーと独バイオエヌテック(BioNTech)は9日、治験の予備解析の結果、開発中のワクチンが90%以上の人の感染を防ぐことができることが分かったと発表した。

発表を受けてバイデン陣営は次期大統領の声明を発表。「私の公衆衛生顧問たちは昨夜、この素晴らしい知らせを受けました。この突破口をもたらし、これほど希望を抱ける理由を与えてくれた素晴らしい人たちに、お祝いを申し上げたい。それと同時に、COVID-19との闘いの終わりはまだ数カ月先のことだと理解するのは大事なことです」として、引き続きマスクの着用や社会的距離の維持、手洗いなどの感染対策の重要性を強調した。

アメリカでは7日、新型ウイルスの感染者が3日連続で12万5000人以上確認された。死者も5日連続で1000人を超えた。これまでの死者は23万7000人を超えている。冬の到来とともに、状況の悪化が懸念されている。

バイデン氏はまた、経済、人種差別、気候変動の問題に力を入れて取り組む予定だ。新型ウイルスで大打撃を受けた経済の刺激策を計画。黒人など少数派の住宅事情や待遇、給与などを改善するほか、黒人男性ジョージ・フロイドさんらの死亡事件につながった、警察による首を強く押さえる逮捕手法を禁止することなどを検討している。

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一方、ドナルド・トランプ大統領はまだ敗北を認めていない。大統領選のいくつかの重要州ではまだ開票作業が続いており、バイデン氏は「当選確実」の状態のままとなっている。



路線変更の大統領令

バイデン氏は来年1月の大統領就任に向けて、さまざまな計画の策定を進めている。米メディアによると、トランプ政権下で論議を呼んだ諸政策を変更するため、以下のような大統領令も検討しているという。

  • 地球温暖化対策の国際的な枠組みの「パリ協定」に復帰する。アメリカは4日、同協定を正式に離脱した
  • 子どものときに不法に入国した人を合法移民とみなすバラク・オバマ政権の救済制度(DACA)を復活させる

バイデン氏は7日、次期大統領として初の演説で、今はアメリカを「癒やす時」であり、「分断ではなく結束」させると誓った。また、トランプ支持者らに向けて、「対抗する相手を敵として扱うのをやめなくてはならない」と訴えた。

バイデン氏とカマラ・ハリス次期副大統領は、政権移行のためのウェブサイトを開設している。

選挙不正の主張を継続

一方、トランプ陣営はさまざまな州で、選挙で不正があったとして裁判を起こしている。選挙管理当局は、不正があったことを示す証拠はないとしている。

トランプ氏は8日夕にツイッターで、同日午後8時から右派ラジオ番組に出演し、司会者マーク・レヴィン氏と郵便投票の不正について話をすると発表。しかし、番組に出演することはなかった。


トランプ大統領は7日午前にペンシルヴェニア州フィラデルフィアの「フォーシーズンズ」で「弁護団が大きい記者会見」をするとツイート。その後に、「フォーシーズンズ・トータル・ランドスケーピングで会見する」とツイートし直した。これに対してフォーシーズンズ・ホテルは、この場所は自分たちとはまったく関係がないとツイートした。

トランプ氏の顧問弁護士、ルディ・ジュリアーニ氏たちが会見した場所は結局、「フォーシーズンズ・トータル・ランドスケーピング」という名前の造園会社の駐車場だった。

ブッシュ元大統領がバイデン氏を祝福

そうした中、共和党元大統領のジョージ・W・ブッシュ氏が8日、バイデン氏の当選を祝福した。大統領選が基本的に公正に行われ、結果は明白であることを、アメリカ国民は確信できるとした。同時に、トランプ氏の選挙戦での健闘をたたえた。

ブッシュ政権の大統領補佐官(国家安全保障問題担当)と国務長官を歴任したコンドリーザ・ライス氏も8日、「ジョー・バイデン次期大統領とカマラ・ハリス次期副大統領、そして記録的な人数で投票して私たちの民主主義の力強さと活力を示したアメリカ人、おめでとう」とツイートした。

しかし、共和党の他の有力者は、選挙結果の受け入れを拒んでいる。連邦下院のケヴィン・マカーシー院内総務は8日の米フォックス・ニュースで、全ての再集計と法廷闘争は最後まで続けられるべきだと主張。「そうなって初めて、アメリカは誰が選挙の勝者かを決める」と述べた。

トランプ陣営の広報担当ティム・マーター氏は同日、ツイッターで、「メディアが大統領を選ぶのではないことを思い出させる」と投稿。一見すると保守系米紙ワシントン・タイムズのものに見える紙面を壁に貼り巡らせた、選対本部の様子と思われる写真を投稿した。

2000年11月8日付となっている紙面には、「ゴア大統領――ゴアが僅差の過半数で勝利」との見出しが出ている。同年の大統領選では、民主党のアル・ゴア候補が共和党のジョージ・W・ブッシュ候補に、法廷闘争の末に敗れた。

しかし、ワシントン・タイムズはツイッターで、こうした紙面を制作したことはないと否定し、写真は加工されたものだとした。その後、マーター氏のツイートは削除された。

(英語記事 Joe Biden pushes forward with plans for office