田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 米国の大統領選は日本でも大きな注目を集めた。主要メディアは、次期大統領として民主党候補のジョー・バイデン前副大統領の当確を伝え、各国首脳の多くがバイデン氏に会員制交流サイト(SNS)などを利用して祝意を伝えた。

 菅義偉(すが・よしひで)首相はツイッターを使い、日本語と英語で、バイデン氏と女性初の副大統領になる見込みのカマラ・ハリス氏にメッセージを送った。それは、短くともポイントを押さえたものになっていた。


ジョー・バイデン氏及びカマラ・ハリス氏に心よりお祝い申し上げます。日米同盟をさらに強固なものとするために,また,インド太平洋地域及び世界の平和,自由及び繁栄を確保するために,ともに取り組んでいくことを楽しみにしております。



 特に「インド太平洋地域」が入っていることに注意したい。オーストラリアのモリソン首相やニュージーランドのアーダーン首相も同じように「インド太平洋地域」の安全保障に期待する旨をバイデン氏に伝えている。



 来年始動するであろうバイデン政権は不確実性を抱える。その一つが、不透明な対アジア戦略だ。要するに中国にどう向き合うのかという問題である。

 トランプ政権は日本、米国、オーストラリア、インドの4カ国を軸にした「インド太平洋構想」を採用している。アジア圏には、欧米の北大西洋条約機構(NATO)のような、多国間の集団安全保障体制は構築されていない。それに代わるものとして、中国の覇権に抗することを狙いとしている構想である。
当選確実となったバイデン氏との今後の日米関係について記者団の取材に応じる菅義偉首相=2020年11月9日、首相官邸(春名中撮影)
当選確実となったバイデン氏との今後の日米関係について記者団の取材に応じる菅義偉首相=2020年11月9日、首相官邸(春名中撮影)
 菅首相やモリソン首相らがこの「インド太平洋地域」をわざわざ文言に入れたのは、この構想へのコミットメントを明瞭にしていないバイデン氏へのシグナルだろう。もちろん、この「インド太平洋構想」は、中国の「一帯一路」構想に政治経済面で対抗する意味もある。