小倉正男(経済ジャーナリスト)

 またしても「ラストベルト」(錆びた工業地帯)が米大統領選の趨勢を決めた。

 ラストベルトとは、ウィスコンシン、ミシガン、ペンシルベニアなどの各州だが、製鉄、自動車関連など旧来型製造業が集積している。少し前までは「基幹産業」といわれた分野が広く分布し、雇用でいえば多くの人的集約型ジョブをもたらしていた。

 今回の大統領選でも世論調査、メディア、識者たちの見方では、民主党のバイデン前副大統領が圧倒的優勢とされていた。支持率などを含めて党派制やイデオロギーが混入した事前情報であり、まったく当てにならなかった。結果は文字通りの大接戦、とりわけ最後の最後までというか、いまだ揉めているのがラストベルトを中核とする票である。

 2016年の前回大統領選では、「ラストベルトがトランプを大統領にした」といわれている。ラストベルトは、もともとは労働組合が強いところで歴史的に民主党の地盤とされてきた。しかし、16年は事前予測とは逆に共和党のトランプ氏がラストベルトで圧倒的な勝利を収めた。大逆転でトランプ氏を大統領の座に押し上げたのはまさしくラストベルトだった。

 民主党にとってそれは想定を超えるものだった。問題は、「グローバリゼーション」に対する皮膚感覚だった。ラストベルトの中産階級、労働者にとっては、グローバリゼーションとは自分たちのジョブを奪う規範だった。

 ラストベルトは、グローバリゼーションを当然のものと受け入れている民主党からは見捨てられた地域だった。民主党では左派のサンダース氏(上院議員)が反グローバリゼーションなのだが、民主党をリードするものではなかった。「アメリカファースト」、一国主義で中国が米国のジョブを盗んだと唱えるトランプ氏なら、ラストベルトにジョブを戻してくれると投票したわけである。

 だが、今回は、ラストベルトはどの州も極めて僅差ながらバイデン氏への支持が上回った。ラストベルトは前回と違ってトランプ氏ではなくバイデン氏に勝利をもたらした。

 トランプ氏の敗因としては、やはり新型コロナ感染症を甘くみたことが大きい。自ら感染したのが象徴的である。新型コロナの抑え込みに失敗したといわなければならない。
トランプ米大統領の新型コロナウイルス感染を伝える大型モニター=2020年10月2日、東京都内(AP=共同)
トランプ米大統領の新型コロナウイルス感染を伝える大型モニター=2020年10月2日、東京都内(AP=共同)
 また、トランプ氏は、マスク着用などをことさら軽視し、新型コロナの感染拡大を許した。米国は、コロナ感染による死者は23万人超、感染者は960万人を上回っている。インド、ブラジルを超えて世界断トツだ。コロナが蔓延すれば、経済が停止しジョブが失われる。