林信行(ITジャーナリスト)

 巨大になり過ぎたテクノロジー企業の今後に一石を投じる出来事があった。米司法省が10月20日、インターネット検索大手のグーグル社を反トラスト法(独占禁止法)違反で提訴したのだ。

 これは同省が1998年にマイクロソフト社を提訴して以来の、大規模な訴訟になるとみられている。実際、訴状には対マイクロソフトの訴訟への言及もあった。

 独禁法は、市場で優越的地位にある企業が、その立場を利用してさらに有利になるように働きかけることを禁じた法律。競合企業にも平等にチャンスを与え、自由競争を促そうという狙いがある。

 98年のマイクロソフトの訴訟では、圧倒的シェアを持つパソコン用基本ソフト(OS)「ウィンドウズ」で市場を独占していた同社が、OSとウェブブラウザー(ウェブサイトを閲覧するソフト)をセット提供することで、他のウェブブラウザーに不利な状況を作っていたことを問題としていた。12年続いた訴訟は、2011年に両者の和解という形で終結した。

 今回の提訴では、インターネット検索や、検索したときに出てくる広告においてグーグルが独占的立場を築き、他社の参入を阻害していることが問題だとされている。

 実は、9月のはじめには米紙ニューヨーク・タイムズがこの提訴の動きをつかんでいた。他の判事たちがまだ訴状が煮詰まっていないと反対する中、ウィリアム・バー米司法長官が押し切って提訴に踏み切ると報じられ、ドナルド・トランプ大統領による選挙戦に向けたパフォーマンスだと指摘された。

 トランプ氏の支持層には、衰退が続く産業に従事している人も多い。そのため、グーグルのように成功したIT企業は、トランプ政権からしばしば「仮想敵」に仕立て上げられてきた。
ワシントンにある米司法省の建物=2020年10月(AP=共同)
ワシントンにある米司法省の建物=2020年10月(AP=共同)
 ただ、巨大IT企業の側にも問題がないわけではない。欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会は、再三にわたって、独禁法に相当するEU競争法違反でグーグルを訴えている。