
2020年11月13日 12:19 公開
エチオピア北部ティグレ州で、地元政党の軍事部門と連邦政府軍との武力衝突が発生しており、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは12日、「数十人、おそらく数百人もの」民間人が虐殺されたと述べた。
ティグレ州政府を担う政党「ティグレ人民解放戦線」(TPLF)と政府軍は長期にわたって対立しており、先週、武力衝突に発展した。政府軍は空爆も実施している。
その結果、何千人もの民間人が国境を越えて隣国スーダンに逃れている。スーダンはそれらの人々を難民キャンプで保護するとしている。
複数の目撃者は、TPLFの軍事部門が9日、殺害を実行したと述べた。一方、ティグレの当局者は、TPLFの関与を否定している。
現地では電話やインターネットの通信網が断絶しており、情報収集が難しくなっている。
民間人の集団殺害は、今回の衝突ではこれが初めてとみられる。
人権団体の声明
アムネスティは声明で、「エチオピアのティグレ地域の南西部にある町マイ・カドラで11月9日夜、数十人、おそらく数百人が刃物で刺されたり、たたき切られたりして殺された」と述べた。
また、「町中のあちこちにある死体や、担架で運ばれる死体の恐ろしい写真や映像を、コンピューター上で確認した」とした。
アムネスティによると、犠牲者は武力衝突には関わっていない労働者らと思われるという。
目撃者らは、「ナイフやなたなどの鋭い凶器による」傷を見たと話しているという。TPLFを支持する武装勢力がルグディと呼ばれる地域で政府軍に敗れた後、襲撃したと述べる目撃者もいるという。
アムネスティ・インターナショナルの東部・南部アフリカ地域ディレクター、デプロス・ムチェナ氏は、「恐ろしい悲劇だ」とし、エチオピア政府に通信網の復旧と監視の許可を求めた。
国連は今回の衝突で、エチオピア北部の数十万人に重要な支援物資が届かない危険が生じていると述べた。
衝突の背景
エチオピアのアビー・アハメド首相は、政府軍の拠点が攻撃されたとし、今月4日に政府軍に対し、TPLFの軍事部門への攻撃を命令した。
以降、衝突や空爆が繰り返されている。
アビー氏は12日、政府軍は大きな前進を果たしたと述べた。
TPLFはエチオピアの連立政権で長年、有力な一員となってきた。しかし、アビー氏が首相に就任した2018年以降、同氏は影響力を弱めようとし、TPLFは政党連合への参加を拒否した。
TPLFの指導層は、不当に追放や汚職疑惑の標的にされていると訴えている。
アビー首相はTPLFの指導者の一部について、「正義からの逃亡者」だとし、国政の改革に反対していると非難している。