2020年11月14日 12:50 公開

チェルシー・ベイリー、BBCニュース(ジョージア州アトランタ)

米大統領選で13日夕、民主党のジョー・バイデン次期大統領が南部ジョージア州で勝つのが確実となった。民主党にとっては1992年以来の勝利となる。この奪還劇の立役者は、ステイシー・エイブラムスという黒人女性だった。

バイデン氏とカマラ・ハリス次期副大統領は、選挙人306人を獲得し(必要な過半数は270人)、来年1月20日に就任する見通しとなった。

ハリス氏はアメリカ初の女性副大統領、初の黒人副大統領、初のアジア系副大統領になる。

この歴史的な勝利に大きく貢献したのが、1人の黒人女性だ。

ハリス氏は7日夜の勝利演説で、アメリカで少数派の女性たち、特に黒人女性が「あまりにしばしば無視されながらも、私たちの民主主義の支柱なのだと、繰り返し立証してきた」とその貢献をたたえた。

ジョージア州アトランタ郊外の自宅でハントさん一家は、ハリス氏の演説を見ながら泣いていた。

「ジョージアは青い(民主党支持の)州になった。これはこの州と住民にとって、特にここに住む黒人住民にとって大転換です」と、27歳のクリスティン・ハントさんは話した。

「これはステイシー・エイブラムスと、現場を足で使ってがんばった大勢の黒人女性の、そして草の根組織のおかげです。みんなで有権者に登録するよう呼びかけて、自分たちの一票がなぜ大事なのか証明するため、取り組んできたんです」

バイデン氏の勝利には、アフリカ系アメリカ人の支援が不可欠だった。勝利演説でも、自分が最も苦しいときに支えてくれたのは黒人コミュニティーだったと感謝している。民主党予備選の開始当初は敗退が続き、撤退もうわさされていたバイデン氏が復活したのは、南部サウスカロライナ州の黒人有権者がこぞってバイデン氏を支持したからだった。この圧勝があったからこそバイデン氏は挽回し、ついには民主党の大統領候補になった

やがて激戦州ペンシルヴェニアで勝ち、そして選挙そのものにも勝つことになったのも、大都市フィラデルフィアやピッツバーグなどの黒人有権者が圧倒的にバイデン氏を支持したことが大きく関係している。出口調査によると、ドナルド・トランプ大統領は2016年大統領選よりは黒人有権者の間で善戦したのものの、バイデン氏は今回、約9割の黒人票を獲得した。

けれども、こうした都市部に足を運び、本当の意味でバイデン氏を助けたのは誰なのか街の人たちに尋ねると、自分たちの地元の黒人女性だという答えが多く返ってくる。

たとえば、フロリダ州ジャクソンヴィルの住民活動家、クルシャンダー・スコットさんは、選挙終盤には脅迫が相次いだため、警備が強化されたのだと話す。スコットさんは、歴史的に黒人住民が多い地元で、有権者登録する人の数を増やそうと活動していた。

あるいは、フィラデルフィアで投票推進活動をするブリタニー・スモールズさんは、地元の人たちに参政権について情報を提供し、市民権の行使を呼びかける活動をライフワークにしている。ひとりひとりの一票が大事だと、承知しているからだ。

アメリカでは有権者だというだけでは投票できない。自ら、有権者として地元の選挙管理委員会に登録する必要がある。

そしてジョージア州では、民主党関係者が口をそろえてステイシー・エイブラムス氏の努力を称賛する。同州の民主党選挙立会人を務めたリンダ・グラント氏は、「結果を出す、やるべきことをやる」という意味で、エイブラムス氏の名前がしばしば使われると話す。

けれども少し前までジョージア州の民主党関係者は、エイブラムス氏を「知事」と呼べる日を待ち望んでいた。2018年の中間選挙でエイブラムス氏は、アフリカ系アメリカ人女性として初めて、州知事を目指して出馬したのだ。対立候補は同州のベテラン州務長官、ブライアン・ケンプ氏だった。

州務長官としての6年間でケンプ氏は、100万人以上の州民の有権者登録を無効にした。「活動なし」やミスだというのが理由だった。ケンプ氏はこれについて、有権者名簿を適切に更新しただけだと説明するが、エイブラムス氏をはじめ多くの活動家が、一部の有権者を不当に排除する動きだと非難した。

ケンプ氏は5万票差で知事に当選した。エイブラムス氏は敗北を認めず、自分が落選したのはケンプ陣営が多くの住民の有権者登録を抹消したからだと主張。こうした選挙妨害に対抗する活動を開始すると宣言した。

「私たちの国が偉大なのは、国を挙げてのこの実験に、壊れたものを直すチャンスを組み込んであるからです」と、ステイシー氏は敗れた夜に述べた。

あれから2年後、今回の選挙に向けてエイブラムス氏と複数の組織は、ジョージア州内だけで80万人以上、有権者の登録を実現していた。そして、ジョージアでは手作業で再集計が行われるものの、結果を変えることにはならないと州選管は話している。

民主党の大統領候補がジョージア州で勝つのは1992年以来となる。

来年1月には、連邦上院2議席の決選投票もジョージア州で行われる。この結果で、どちらの党が上院を支配するのかが決まる。そしてここでも、エイブラムス氏たちが働きかけた有権者の票が、物を言うのかもしれない。

バイデン氏が当選確実になったのは、エイブラムス氏や多くのボランティアのおかげだと言える。

「エイブラムスさんは負けたときに『わあ負けちゃったー』と降参して、それっきりにすることだってできたはずです」と、ハントさんは言う。「それなのに彼女は、どんどん前へ前へと進んで、自分自身と、このコミュニティーのために、負けを勝ちに変えたんです」。

ハントさんのおば、テリーサ・ウィルソンさんも同意見だ。エイブラムス氏の活動は、自分の力に気づいたジョージア州の黒人有権者を永遠に変えると、ウィルソンさんは言う。

「実際に足を使って各地を歩いて、あれだけの人数を登録して、投票するよう働きかけた。あの活動はジョージアと国全体に、すさまじい影響があった」

「私たちはもうずっと前から選挙のたびに、軽視されてきたんだと思う。けれども今ではこの国も世界も、私たちの票がいかに大事か、気づいたはずだ」

(英語記事 Stacey Abrams: The woman behind Biden's biggest surprise