「牛乳専科もうもう」では、夏を中心としたシーズンだけではなく、雪深くなる冬季も含めて年間通じた営業を可能にする対策が課題だった。実際に考案されたアイデアは「飲むヨーグルト」の新規販売やラスクなどのパッケージを牛柄に変更するなど多岐にわたり、実用化した結果、新たなパッケージ商品の販売量は前年比で20%増となった。

 同社は創業が1969年ですでに50年を超えるが、牛乳消費量の激減や人手不足などの苦境の中で、乳製品にシフトして事業を持続させてきた。

 2代目の同社代表、中野和哉さん(50)は「長年ここで生活しているだけに立科の良さを意識できていませんでした。ですが、学生さんと交流したことで改めて魅力を再認識できたことで、今まで以上に意欲が湧いてきましたね」と振り返った。

 「タテシナソン」は、その後も木材建材業者やアクティビティ施設運営事業者の課題に取り組み、すでに計3回実施。2020年はコロナ禍のため中止したが、回を重ねるごとに応募学生は増え、19年9月の第3回は定員20人に、九州や関西、首都圏の学生36人の応募があり、抽選となったほどだ。

 こうした実績が評価され、「タテシナソン」は、日本最大の広告会社ネットワークである一般社団法人日本地域広告会社協会(略称JLAA、後藤一俊理事長)が地方自治体の取り組みを表彰する「第4回JLAA地方創生アワード」の最優秀賞に輝いた。

 「JLAA地方創生アワード」は2017年に創設され、JLAAの会員社がサポートする自治体のさまざまな施策を表彰。この取り組みは、地方創生関連施策のノウハウが全国的に共有されることを目指している。

 ただ、「タテシナソン」の注目すべき点は、事業者支援だけではない。参加する大学生は問題意識が高いだけに立科町での思い出を今後の職業などに生かしてもらう将来も見据える。参加学生たちはいずれ卒業を迎え、大半は就職する。その後、就職企業はさまざまだろうが、「タテシナソン」の経験から魅力を知った若者に何らかのかたちで立科町を活用してもらえれば、人口増や関係人口増につながるといった視点だ。

 実際、「タテシナソン」に参加した長野大2年生の山内梨帆さん(20)は、「インバウンド(訪日外国人客)に関して興味があり、ペンション経営などで、外国の方々の受け入れなどに関われるなら、永住して取り組みたい」と語った。
「タテシナソン」に取り組んだ長野大の学生たち。後列左から、今西健太さん、山内梨帆さん。前列左から、細田菜々子さん、中村春斗さん、竹花日和さん=2020年10月、長野県立科町
「タテシナソン」に取り組んだ長野大の学生たち。後列左から、今西健太さん、山内梨帆さん。前列左から、細田菜々子さん、中村春斗さん、竹花日和さん=2020年10月、長野県立科町(iRONNA編集部、西隅秀人撮影)
 また、立科町の施策は「タテシナソン」にとどまらない。特筆すべきは、コロナ禍などまったく想像もつかなかった2015年度からテレワークへの取り組みを始めていたことだ。