企業誘致などは現実的に困難なことから、テレワークによる雇用創出を目的に検討を始め、福祉的要素を加えるなどして18年度に総務省の「ふるさとテレワーク推進事業」に認定された。昨年度に立科町の施設でテレワークセンターを開設し、企業進出や住民のテレワーク就労支援が本格化している。

 雇用創出といった基幹施策に取り組む立科町企画課の上前知洋主任(39)は「地方の人口減問題解決は非常に難しい課題ですが、コロナ禍で地方が見直されている今、まさにチャンスですね」と意欲を見せた。

 そもそも上前氏自身が異色の経歴を持つ。出身は兵庫県西宮市だが、信州大に進学したことで長野県職員として就職した。農林関係の仕事を任じられ立科町に派遣された際、基礎自治体の現場の苦悩を実感。「県庁で政策を立案するより、現場で貢献したい」という思いから県職員を辞め、正規試験を経て立科町職員として転職したという。

 一方、観光政策の面でも時代の変化に応じた見直しが進められている。先にも触れたが、立科町は白樺湖と女神湖といった美しい自然の観光資源を持つ。かつては、団体旅行だけでなく、ペンションブームもあり盛況だった時期もあった。

 だが、特にペンションは、個室に籠らず他の宿泊者やオーナーとの交流を重視する独特の文化が、時代と共に徐々に敬遠されるようになった。それに加えてオーナーの高齢化による後継者不足なども相まって、苦境に立たされている。

 ただ、コロナ禍が追い風になり、ワーケーションなどの価値観が生まれたことで、ペンションはIT企業の社員の長期貸し切りといった新たなニーズが生まれつつあるという。

 一般社団法人「信州たてしな観光協会」の渡邉岳志企画室長(44)は、「30年前、ペンションの様式は最先端のブームでした。それが時代の流れで、テレワークやワーケーションが最先端ならそれに合わせた戦略を立てなければいけません。ペンションオーナーにリスクを感じるならサブスクリプション(定額で一定期間の利用権利を持つ)オーナーという道もありますからね」と、現状をこう指摘した。
長野県立科町の観光戦略などについて語る「信州たてしな観光協会」の渡邉岳志企画課長=2020年10月(iRONNA編集部、西隅秀人撮影)
長野県立科町の観光戦略などについて語る「信州たてしな観光協会」の渡邉岳志企画課長=2020年10月(iRONNA編集部、西隅秀人撮影)
 コロナ禍はインバウンドに依存した観光業界のビジネスモデルのリスクを露呈した。だからこそ、これを機に新たな時代に即し、持続可能な政策にどう取り組むかが重要になる。人口7千人あまりの立科町だが、危機感を抱き、コロナ禍をチャンスに変えようとする志の強さが際立っていた。

 大都市圏の人口集中に伴い、地方の人口減といった課題は「手の施しようがない」というあきらめの声も多くある中で、今、果敢に立ち向かうか否かが30年、50年先の命運を左右するのではないだろうか。(iRONNA編集部)

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