杉山崇(神奈川大人間科学部教授)
麻生マリ子(家族心理ジャーナリスト)

司会・対談構成:梅田勝司(フリーライター、編集者、「PressRoom.jp」記者)

 本連載では、3つのテーマを6回にわたり取り上げてきた。締めくくりのテーマとして、社会の最小ユニットである「家庭」について掘り下げていきたい。

 コロナ禍を受けて学校が休校になり、子供の面倒を見るために親が会社を休む家庭が増えた。また、緊急事態宣言後にリモートワークが普及し、親たちが自宅で過ごす時間が長くなると、子供の虐待や夫婦関係の終焉などのネガティブ話題が聞こえてくるようになった。

 東京都では1日あたりの感染者数が500人を超える日もあり、全国的に感染が拡大しつつある。「第3波」の到来で政府は11月21日、経済支援策の「GoTo」事業の運用見直しを表明した。この先、再び「巣ごもり生活」が広がることも考えられる。

 家庭は本来、ほっとする居場所ではなかったのか。コロナ禍は、そんな根源的な問いさえも見直さざるを得ない事態を引き起こしている。

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梅田 人間にとって「家族」にはどんな心理的側面があるんでしょう。

杉山 家族は心理学だと「マイクロシステム」と呼ばれています。社会の最小ユニットという考え方です。生活を共にする中で、行動様式や価値観などの最小単位ですし、子孫を残す生殖活動にも欠かせません。

 子供はどんなユニットに生まれてくるかは選べませんが、逆に言うとユニットがしっかり機能しているから生まれてくるわけです。ユニットがしっかりしていないと生存できないんですよね。

 怖い話ですけど、子供を育てられない若者が妊娠して、赤ちゃんを遺棄する事件が起きています。これはユニットとして成立していないところに生まれ落ちると生存できない例の一つと言えます。家庭がユニットとして最低限機能しているから、子供は生存が可能なのです。

 なので、生存した子供にとっては、自分が生まれる前から存在している親はまるで神話のようなもので、自分にはどうしようもない世界です。
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
※写真はイメージ(ゲッティイメージズ)
梅田 コロナ禍で巣ごもりが始まって以来、「コロナ離婚」や夫婦げんかが増えたと話題になりました。これはどういう心理的なメカニズムから起きているのでしょう。

杉山 単純に接触する時間が長くなったことが原因だと考えられます。お互いの嫌なところも、ますます目につくわけです。人間は嫌がれば嫌がるほど、相手の嫌なところしか見えなくなります。巣ごもりしていると気分をリセットできなくなり、相手の嫌なところばかり見えるようになると、けんかや離婚ということになるわけです。