2020年11月25日 12:21 公開

タイ政府は24日、反政府デモの参加者に、王室に対する批判を禁じる不敬罪を適用した。同罪の適用は過去2年で初めてという。

この日は活動家数人が不敬罪を犯した疑いで訴追された。有罪となった場合、最長15年の禁錮刑が科せられる。

22歳の活動家パリト・チワラク氏は、不敬罪を犯した疑いで出頭を命じられたと発表。このほか、人権派弁護士アノン・ナンパ氏、パヌサヤ・シチジラワタナクル氏など少なくとも6人が、同様の罪で訴追される見通しだという。

タイではここ数カ月、学生を中心とした反政府デモが続いている。デモ参加者は憲法改正や首相の辞任に加え、王室改革を求めている。

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タイの不敬罪は、世界でも最も厳しい部類に入る。適用の再開は、25日に首都バンコクの王室財産管理局前で予定されているデモに先駆けて行われた。

デモではこのところ、国王に対してあからさまな批判が展開されるようになった。

国王ラーマ10世(ワチラロンコン国王)は、ドイツで大半を過ごしていることで批判を浴びている。

また、国王の権力拡大や、王室の財産を国王個人の財産と宣言したことなどが非難の対象となっている。この財産は、前国王ラーマ9世(プミポン国王)の時代にはタイ国民のための基金とされていた。

ラーマ10世はさらに、バンコクに駐在する全軍隊の指揮権を持つと宣言。近年で最も王室に軍事力が集中する事態となっており、この判断にも疑問の声があがっている。

バンコクでは先週、デモ参加者が憲法改正を審議している議会へ突入しようとし、警察と衝突。少なくとも41人が負傷した。

デモ参加者は煙幕や塗料の入った袋を使用。警察は放水銃や催涙ガスで応じた。

タイでは長年、政情不安が続き抗議活動が行われているが、今回の反政府デモは今年2月、裁判所が民主派の野党に解散を命じたことで始まった。

6月には、著名な民主派活動家ワンチャルーム・サッサクシット氏が亡命先のカンボジアで失踪したことで、デモが拡大。ワンチャルーム氏は街中で拘束され、車で拉致されたと報じられている。

デモ参加者は、タイ政府がワンチャルーム氏の誘拐を指揮したと非難しているが、警察や政府は否定している。

しかし一連のデモは、王室に対する批判が始まったことでさらに広がった。

タイ国民は生まれたときから、国王を敬い愛するよう教え込まれる。さらに、国王を批判した場合に被る結果を恐れるよう叩き込まれる。

ただし、どんな行為が不敬罪に当たるのかは明示されていない。人権擁護団体は、不敬罪は言論の自由や改革を望む声を抑え付ける政治の道具として使われていると指摘している。

こうした中、王室支持派は学生主導のデモに反対し、デモ参加者について君主制の撤廃を求めていると非難している。デモ参加者はこれを否定している。


<分析> 秘密裁判と厳罰 ――ジョナサン・ヘッド、BBCニュース

タイで最も恐れられている法律が、3年ぶりに適用された。報道によると、ラーマ10世による命令だという。

デモ参加者はこのところ、合唱で、舞台の上で、そして多くのタイ国民にとって下品な落書きを使い、おおっぴらに王を批判するようになっていた。

こうした活動はタイでは目新しいものだ。過去の政情不安の中でも、王室を攻撃しようとする人はほとんどいなかった。しかし若年層の活動家は、王の出費や権力に異議を唱えるべきだと訴えている。

しかし不敬罪では非公開の裁判が認められている。被告人は厳しい禁錮刑を減刑するため、罪を認めるよう大きな重圧をかけられる。デモ参加者が今後直面する法律はそのようなものだ。しかし、王室のスキャンダルがソーシャルメディアであっという間に拡散する現代では、以前に比べて、反王室の雰囲気を抑える効果は薄いかもしれない。

タイ王室は現在、支持を集めるためにさまざまな活動を行っているが、不敬罪の適用で王室への同情が失われ、逆の結果に陥るかもしれない。


(英語記事 Thailand revives law banning criticism of royals