2020年11月27日 13:32 公開

ケヴィン・ポニア、アシサ・ナゲシュ、BBCニュース

最初に人がたどり着くまで、48時間しかかからなかった。

米ユタ州当局が23日、レッド・ロック砂漠の奥地にキラキラ輝く金属の構造物を見つけたと発表したとき、正確な場所までは明かさなかった。

そうすることで、素人探検家たちが発見に乗り出し、迷子になってしまうのを防げるだろうと考えた。

しかし、効果は小さかった。25日には、映画「2001年宇宙の旅」に出てくるモノリスに似た物体の横に立つ、誇らしげな表情の人々の写真がインスタグラムに現れ出した。自分こそ最初に到着したと、世界に自慢するものだ。ただ、この金属の物体がなぜここにあるのかはわかっていない。

そうした人々は、グーグル・アースで位置を特定して座標をオンラインに投稿した「インターネット探偵」を頼った。

「そこに最初に行くと決めた。この物体が自然に隠れて5年間もそこにあったことに興味を引かれた」と、元米陸軍歩兵将校のデイヴィッド・サーバーさん(33)は話した。掲示板サイトのレディットで正確な場所がわかったという投稿を見て、夜通し6時間、車を運転して来たという。

州野生生物当局が最初に金属物を見つけたのは18日だった。人里離れた、火星のような地形の上空をヘリコプターで飛び、オオツノヒツジを数えていた時のことだった。

座標をレディットに投稿したティム・スレインさんは、このヘリコプターの飛行経路を分析。レーダーから消えた所を、ヘリの着陸地点だと考えたという。

彼は公式の写真や映像と照らし合わせ、峡谷を特定。長くて細い影が特徴となった。

「場所が公になれば、人々が訪れることはわかっていた」とスレインさんは話した。「場所を明らかにしたことを怒るメッセージが届いている。だが、私が見つけなくても、すぐに誰かが見つけていただろう」。


ユタ州在住のサーバーさんは、現地に向かうとレディットで表明し、行動に移した。途中、数多くのメッセージや要求が届いた。「秘密のドアがあるかもしれないから磁石を持っていけ!」というものもあったという。

彼が到着したのは未明だった。他に人の姿はなく、モノリスはもちろん、流れ星にも感嘆したという。やがて、同じようにインターネットで座標を知った人たちが現れ出した。サーバーさんは興奮状態でレディットに書き込んだ。

「2020年に経験したさまざまなネガティブなことからの素晴らしい逃避となった」


だが、2つの謎は残ったままだ。誰が設置したのか? 何のためか?

多くの人が面白半分に(一部の人は大真面目に)、地球外生物がやって来て埋め込んだと説明している。ただ、コンセプチュアル・アートの作品だろうとの見方が圧倒的だ。

専門家らは当初、「厚板」彫刻で有名な故ジョン・マクラッケン氏(2011年死去)の作品ではないかとした。同氏のギャラリーも最初、この見方に同意したが、のちに撤回。同氏へのオマージュとして別の芸術家が作ったのではないかとした。

その後、芸術家ペテシア・ル・フォンホーク氏の名前がインターネット上に挙がった。同氏は以前、砂漠の秘密の場所にトーテムの彫刻を設置しており、重要なことに、ユタ州に住んで仕事をしていたこともあった。

ただ、彼女はオンラインの芸術誌アートネットに対し、「砂漠に秘密のモニュメントを置くことは、確かに考えた」としたが、「これは違う」と話した。


辺ぴな場所に芸術作品が設置されるのは、珍しいことではない。周囲の自然を生かした作品は、それが置かれた場所に到達する過程も、芸術の一部となっている。

ニューメキシコ州西部の砂漠にあるとだけ公表されている、ウォルター・デ・マリア氏の作品「ライトニング・フィールド」や、ニュージーランドのワナカ湖に設置された、マーティン・ヒル氏とフィリッパ・ジョーンズ氏の「シナジー」はその例だ。


イギリスの芸術家で野外彫刻を制作しているアンディ・メリット氏は、ユタ州でモノリスが見つかったと知った時、「芸術家か、『2001年宇宙の旅』に空想を巡らせる裕福な人物」によるものだと思ったという。「普通ではない場所であれこれやる芸術家はたくさんいる。特にアメリカには」。

すでに現地を訪れた何十人(もしかすると何百人)かが投稿した動画からは、「プロの仕事」であることがうかがえる。大型のステンレス鋼とみられる金属板3枚がリベットで留めてあり、内側は空洞になっている。岩盤を砕いてこれを埋め込むのには、本格的な道具が使われた。

最初に現地に到着したというサーバーさんは、旅を終えた後、「始めから別世界のものであってほしいと願っていた(中略)そう願わない人はいないだろう。ただ本心では、根気強い芸術家か、『2001年宇宙の旅』のファンによるものだろうとはわかっている」と話した。

ユタ州の公衆安全当局は26日、BBCの取材に、現地を訪れるのは危険な場合もあるので推奨しないが、公共の場所なので訪問を止めることもできないと述べた。構造物の撤去は決定されていないという。

「瓶から精霊が出てしまった」と、当局のアンドリュー・バテンフィールド氏は話した。人々が訪れ、写真をソーシャルメディアに投稿していることについては、「ここは自由の国だから」と述べた。

(英語記事 People have tracked down the mystery Utah monolith