松沢直樹(フリーライター)

 ANAホールディングスは10月21日、2021年3月期の連結最終損益が5千億円前後の赤字になることを明らかにした。前期は276億円の黒字である。今回の新型コロナウイルス問題で、いかに深刻な打撃を受けているかが分かる。

 それだけではない。日本航空は10月30日、希望する社員に対して、出向先で働く機会を増やしていることを明らかにした。グループ全体で1日あたり最大500人程度が出向先で働いているという。

 国内の最大手2社がこの状態である。安価な料金を最大の強みにする格安航空会社(LCC)はさらに深刻だ。エアアジアジャパンは11月17日、東京地裁に破産手続きの開始を申し立てた。負債総額は217億円。新型コロナ禍で需要が低迷しており、マレーシアのエアアジア本体から資金面での支援を打ち切られたのが決定的となった。

 枚挙にいとまがないのでこれまでにするが、企業規模にかかわらず、航空業界全体がかつてない規模の苦境に立たされているのは間違いない。

 だが、今回の新型コロナ問題がなくても、解雇や出向などの余剰人員対策や、大規模倒産などの問題は起きただろうと私は思う。航空業界の赤字体質は、今に始まった話ではないからだ。

 四半世紀以上前のことになるが、私自身、エアライン(航空会社)で働いていた時期がある。バブル崩壊後ではあったが、本格的な不況を実感する時期ではなかった。それにもかかわらず航空座席が全く売れず、毎日、営業の責任者と頭を抱えていたのをよく覚えている。

 当時、ほとんどの航空会社は自社で航空座席を販売する力が弱く、旅行代理店に依存していた。1つの便の航空座席のうち、3分の1ほどを割引料金で旅行代理店に預け、販売してもらうのである。人気がない路線の場合、3分の2以上を預けることも珍しくなかった。

 旅行代理店は、航空会社から預かった航空座席を自社企画のパッケージツアーなどに組み入れて販売して利益を出す。もちろん、預かった航空座席のすべてを販売しきれないケースもある。その場合は、ペナルティーなしで航空会社に「返却」するのだ。当時は、搭乗日の14日前に「手仕舞日」と呼ばれる日を設け、この日に旅行代理店が売れなかった航空座席を返却するのが慣習だった。
人気のない成田空港のターミナル=2020年6月20日、西隅秀人撮影
人気のない成田空港のターミナル=2020年6月20日(iRONNA編集部、西隅秀人撮影)
 ほかにも、修学旅行などの団体旅行を別枠で受けていたが、これも当然ながら割引価格。航空会社が希望する小売価格(当時は個札と呼んでいた)で売れる割合は、ドル箱路線の「福岡-羽田」「札幌-羽田」を除けば、良くて1割程度だった。