田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 世論調査によると、菅政権の支持率が急落したという。共同通信の調査では前回調査から12・7ポイント低下の50・3%、読売新聞の調査では8ポイント低下の61%だった。


政府の新型コロナ対応について「評価しない」が55・5%で、「評価する」37・1%を上回った。前回11月の調査では「評価する」が「評価しない」を上回っていたが、逆転した。



 読売新聞のアンケートには、政府に感染対策と経済対策のどちらを優先すべきかを問いかけるものもあり、世論は圧倒的に感染症対策を優先していた。実際にテレビのニュース報道やワイドショーなどは、経済刺激政策であるGoToキャンペーン事業を徹底的に批判し、感染拡大に警鐘を鳴らしている。

 感染拡大阻止は疑うことのないほど重要である。だが、それは経済活動との「トレードオフ」で考えるべき話だ。トレードオフとは、どちらか一方「だけ」を重視する発想ではない。いずれも行うが、最適なバランスを目指していく政策の組み合わせともいえる。経済学の専門家たちは当初から、感染症の抑制と経済活動はこうした関係にあると指摘してきた。

 死亡者数の観点からいうと、新型コロナウイルスで死亡者が出る一方で、経済的な苦境の中で亡くなってしまう人たちも多く出てしまうだろう。ここでは、それぞれを「感染症の死亡者数」と「経済要因による死亡者数」と呼ぶことにしよう。

 学習院大の鈴木亘教授は、このトレードオフ関係を近著「社会保障と財政の危機」(PHP新書)で詳細に解説している。経済活動が活発化すると、新型コロナに感染することで高齢者や持病のある人たちを中心に、亡くなる人や重篤な状態に陥る人が出てくる。その傍らで、経済活動を抑制しすぎると、失業による社会的地位の喪失などで経済死ともいえる人たちが多く出てしまう。
政府与党連絡会議であいさつする菅首相(右)=2020年12月7日、首相官邸
政府与党連絡会議であいさつする菅首相(右)=2020年12月7日、首相官邸
 緊急事態宣言は、経済活動を過度に自粛することで、結果的に「経済要因による死亡者数」を激増させてしまった。だが、現在の政府の対策は、トレードオフ関係の中で最小の「感染症の死亡者数」と最小の「経済要因による死亡者数」を目指そうとしていると鈴木教授は指摘する。これは感染症対策の専門家の間で「ハンマーとダンス」と呼ばれるものだ。