2020年12月09日 11:36 公開

ナヴィン・シン・カドカ環境問題担当編集委員、BBCワールドサービス

世界最高峰のエヴェレストがこれまでの測定より86センチ高かったと、ネパールと中国の当局が8日、共同発表した。

ネパールと中国はこれまで、山頂に積もった雪を高さに含めるかどうかで見解が異なっていた。新たな標高は8848メートル86センチとなる。

中国は以前の測定で標高8844メートル43センチとしており、ネパールの測定より4メートル近く低かった。

エヴェレストは中国とネパールの国境にあり、登山者はいずれの国からも登っている。

ネパールの外務省と測量当局によると、両国の測量関係者は新たな標高での合意を調整していた。

昨年、中国の習近平国家主席がネパールの首都カトマンズを訪れた際に、世界最高峰の標高を新たに共同発表することで合意に至った。

なぜ違っていた?

中国当局は以前、エヴェレストの標高は岩の部分で測定されるべきだと主張。一方、ネパール当局は、雪も標高に含まれるべきだとしていた。

中国側は2005年に測量をし、標高を定めていた。

ネパール政府関係者は2012年にBBCに対し、中国から中国側が出した標高を受け入れるよう圧力を受けており、「決着をつけるために」新たな測定の実施を決めたと話していた。

ネパールが掲げていた「標高8848メートル」は、1954年のインド当局による測定結果だった。ネパールは今回初めて、独自に測量をした。

ネパールの地上測量員4人が、2年間の訓練を経て、エヴェレスト山頂に向かった。


「これ以前に私たちが独自に測定したことはなかった」と、ネパール測量当局のダモダル・ダカル広報官はBBCに話した。

「現在、私たちは(エヴェレスト山頂にも登れる)若い技術者チームを抱えており、自分たちでできる」

ネパール測量隊のリーダー、キムラル・ガウタム氏は、エヴェレスト山頂で昨年、測量機器を設置中につま先を凍傷で失った。

「登頂者にとって、最高峰の高さを測るのは偉業と言える。私たちはまだそれに取り掛かったばかりだ」と、ガウタム氏は下山後にBBCネパール語に語った。

「過去のエヴェレストに関する調査と違い、日中の太陽光による誤差を最小限にするため、午前3時を選んだ」

疑義が出された他の理由

地質学者からは、2015年の大地震がエヴェレストの標高に影響を及ぼした可能性が指摘されていた。マグニチュード7.8の地震はネパールで死者約9000人を出し、エヴェレスト登山のベースキャンプの一部に雪崩被害を引き起こした。これにより少なくとも18人の登山者が死亡した。


この地震によりエヴェレスト山頂の雪が減ったかもしれないとの見方が、一部の地質学者から出た。

カトマンズの北に位置し震源地に近いランタン・ヒマールなど、ヒマラヤ山脈の他の高山が地震後、1メートル近く標高が下がったことが、専門家らによって報告されていた。

さらに、エヴェレストも他のヒマラヤ山脈の山々のように、地殻変動によって実際に高さが増したのではないかとの見解も出ていた。しかし、大規模な地震がそれを逆戻りさせたとする専門家もいる。

「2015年の地震は、私たちが再測定をする大きな理由の1つだ」と、ネパール測量当局のダカル氏は話した。

どのように測定した?

山の高さは平均海面を基準にして測る。どこがてっぺんかより、どこが底かを探る作業だ。

ネパール当局は、ベンガル湾を海面の基準にした。ただ、インド当局がすでに、ベンガル湾を基準にしてインドとネパール国境近くのエヴェレスト寄りの地点を測量しており、ネパール当局はこのデータの提供を受けた。

これをもとに、ネパール当局は全長250キロメートルにわたって、エヴェレストが視認できる地点を選んで測量をし、データを統合した。

中国国営の新聞・中国日報によると、中国の測量隊は東部・山東省に面する黄海の海面を基準にした。


両国の測量隊は、標高の算出に三角法の公式も利用した。底辺と角度から高さを割り出すものだ。

ただ、地上での頭脳作業だけではなく、誰かが実際に山頂に行く必要がある。ネパール測量隊は昨年、山頂に登頂。中国測量隊は今年5月に登り、新型コロナウイルス対策で登頂が禁止となった今年、山頂に立った唯一の登山隊となった。

ネパール当局は、三角法による正確な算出のため、12の山の標高を利用したとした。中国メディアは、中国当局も同じ方法を採ったと伝えた。

両国はまた、全地球的航法衛星システムも利用して、測定精度を高めた。


中国は1975年と2005年にも、エヴェレストの測量を実施している。

ヒマラヤ山脈に関する情報を扱っているヒマラヤン・データーベースによると、2005年の測量では、中国は山頂に全地球測位システム(GPS)装置を設置した。

中国測量隊は今回、中国の人工衛星によるナビゲーション・システムを利用。アメリカが所有するGPSのライバルとされているものだ。

「このシステムを使って、雪の深さ、天候、風速を測定し、氷河のモニタリングや生態系の保護に活用できる」と、中国国営の新華社通信は伝えた。

ネパール測量隊は測定にGPSを利用した。

「私たちは国際的に認められている手法を使ってエヴェレストの標高を算定した」と、ネパール測量当局のダカル氏はBBCに話した。

(英語記事 Mt Everest grows by nearly a metre to new height