2020年12月10日 14:04 公開

イギリスのボリス・ジョンソン首相は9日、英・欧州連合(EU)間の通商協定をめぐる交渉の妥結に向け、ブリュッセルで欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長と会談した。ブレグジット(イギリスのEU離脱)を受けた交渉は難航しており、この会談でも合意には至らなかった。

英首相官邸の報道官は、「大きな溝が残っている」ものの、13日までに「しっかりした決定」にたどり着けるよう交渉を進めていくと述べた。

一方のフォン・デア・ライエン氏も、両者はなお「大きくかけ離れている」と話した。欧州委員会は、ブレグジット後の通商協定でEU加盟国を代表している。

夕食会にはイギリスのデイヴィッド・フロスト首席交渉官とEUのミシェル・バルニエ首席交渉官も参加。2人の交渉も、ブリュッセルで再開される予定だ。

BBCのローラ・クンスバーグ政治編集長は、この日の会談は「はっきり言ってうまく行かなかった」と批評。確固とした合意のないまま、年末にブレグジットの移行期間が終了する可能性へと「大きく近づいた」と指摘した。

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イギリスは今年1月末にEUを脱退した。しかし年内は移行期間となっており、この間にEUと貿易などの諸分野について協議・合意する手はずになっている。

ただ、漁業権や競争をめぐる規制などで大きな溝が残っており、交渉は難航している。合意に至れなかった場合、EUとイギリスの間には国境管理や関税などが復活することになる。

今回の夕食会は、両者の相違を確認し、共通項を見いだすことで現状を打破する最後の機会ととらえられていた。

イギリス側は会談後の声明で、「交渉に横たわる大きな障害について率直なやりとりが行われた」と説明。「両者の間には非常に大きな溝が残っており、橋を渡せるかは不透明だ」と述べた。

その上で、向こう数日間さらに協議を重ねることで合意したとし、ジョンソン首相は「可能性のある協定にたどり着く道を試さずに去りたくない」と述べているとした。

フォン・デア・ライエン氏はツイッターで、「活気のある興味深い」話し合いができたと報告。お互いの立場を「十分に理解している」ものの、「なお大きくかけ離れている」と説明した。

また、「週末までに結論に達するだろう」と述べた。

ジョンソン首相はブリュッセルを離れる際、漁業権や、EUのルールからイギリスが逸脱した場合の報復措置などについて、EUが「どんなイギリス首相も受け入れない」ような条件を提示してきたと述べた。

英国内では合意なしへの懸念高まる

通商交渉で合意がまとまった場合、その内容はEU議会および英議会で承認される必要がある。

リンジー・ホイル英下院議長はスカイニュースに出演した際、下院は審議が必要となればクリスマス・イヴの24日まで開会すると話した。

現在、下院は21日に閉会する予定となっている。

ロバート・ジェンリック住宅・地域社会・自治相はITVで、交渉には「はっきりとした動き」がなく、「非常に深刻な不一致」を超えなくてはならないと懸念を表明した。

最大野党・労働党のジョナサン・レイノルズ議員はBBCのニューズナイトに出演し、イギリス政府のやり方は「十分ではない」と指摘。政府は協定を取り付けることを「約束しており、国民は当然、それを期待している」と強調した。

「合意なしは明らかに、イギリスに住む大半の人々にとって悪夢のシナリオだ」

スコットランド国民党(SNP)のイアン・ブラックフォード議員も、「合意なしは外交上の、そしてボリス・ジョンソンが持つリーダーシップの大きな失敗となる」と述べた。


<分析>ローラ・クンスバーグ政治編集長

最初の1回で成功しなかったら、何度も試すことができる。しかし、その後に失敗がやってくることもある。

そして今、何カ月にもわたる交渉の結果は、そういうことになりそうだ。異なる未来に進むための円滑な道筋を作る話し合いであり、理論的には、巨大な貿易圏から外の世界への切り替えを容易にする協定だった。

それでも、今後の波乱に満ちた数日で変化が起こる可能性はある。

ジョンソン英首相は、協定がないことで起こりうる障害を受け入れるのはリスクが高すぎると判断するかもしれない。

一方でEU高官が、意見を変えるよう加盟国首脳を説得するかもしれない。

しかし一連の交渉努力を再評価し、再び話し合いが活性化する可能性は遠く離れてしまったように思える。


<分析>カティヤ・アドラー欧州編集長

ジョンソン首相とフォン・デア・ライエン欧州委員長の夕食会は、EU側が予想していた通りに終わった。決裂も、通商協議のこう着状態の打破もなかった。

EUの外交官は、向こう数日さらに交渉を進める準備があるとしている。一方で、イギリスの合意の決定権については、同国政府の見解とは異なり、首相官邸が握っているとEUは見ている。

10日に始まるEU首脳会談では、ブレグジットは公式の議題にはなっていない。しかし加盟国首脳は交渉の進展について説明を受けることになるだろう。

各国のブレグジットに対する態度は硬化しているとみられる。

イギリス側からもEU側からも、「悪い協定よりは、協定がない方がいい」といった意見が出ている。

欧州委員会は、イギリスと通商協定が結べなかった場合に空と陸の円滑な交通を守るための、「ぎりぎりの」緊急時対応計画を間もなく発表するとしている。


(英語記事 'Large gaps' remain after crucial Brexit talks