政治家はあまたの人々の間に立ち利害調整を行う存在ではあるものの、感染症の専門家でもなんでもない。国民の命を守るために最前線で働く方々の声にもう少し耳を傾け、何よりも大切な国民の命を守るための思い切ったかじ取りや予算編成をしてほしいものだ。

 現状では「さらに10万円を国民に支給するか否か」ごときで悩んでいる場合ではない。長期の緊急事態宣言を出し、国債を発行してでも国民の生活保障をし、感染拡大防止に努め、何が何でも今を乗り切らねばならない。

 私自身は大阪府民なので、大阪府の新型コロナ感染拡大対策に関して大阪維新の会の吉村洋文知事が連日のように在阪メディアを集めて記者会見を行っていたので常に動向を注視していた。しかし正直なところ、維新の会の政策は大変残念極まりないものだと感じている。

 吉村知事ならびに大阪市の松井一郎市長たちは「今年9月には大阪府でワクチンができます(当然できてはいない)」という無責任発言を行ったのが記憶に新しい。それにとどまらず「雨がっぱ募集」という不可解な政策や、「イソジンが新型コロナ予防に効果的(かも)」という舌禍事件、「大阪モデルの基準変更」などという突拍子もない発言をこれまで繰り返し、府民を混乱に陥れてきた。

 今のところ両氏は派手なパフォーマンスで「上手にやっている感」を出しているので、多少ごまかせてはいるものの、徐々に維新所属の2人に批判の声が出てきている。

 それもそのはず、大阪府の感染者数や重症患者数のデータを見れば散々たる結果なのだ。今や大阪府の感染率は東京都を超える数値で、新型コロナ対応の通信簿があるとすれば吉村知事は0に限りなく近い1であろう。

 さらに言えば、維新は新型コロナの感染力を見くびった。「メディア露出を続けたことによる吉村人気が絶頂のうちに住民投票を実施すれば、都構想が実現し、維新の勢いが増すだろう」という党利党略のために、コロナ禍にもかかわらず大阪都構想の住民投票を11月1日に企画、実行した。

 それに伴い、10月には大阪府内各地で頻繁に街頭演説や大阪都構想説明会が行われ、3密状態が多発も多発。新型コロナ対策に専念すべき時期であるにもかかわらず、どこから見ても府民の命を守ろうという政治家として当然の姿勢はカケラも見られなかった。

 「感染対策を徹底してください」と上っ面で言いながら、自分たちは表に出て群衆を集める。維新のそうした振る舞いによって、大阪府民全体の危機意識が低下してしまった。
「大阪モデル」で最も深刻な「赤信号」が灯り、赤色に照らされた太陽の塔=2020年12月3日、大阪府吹田市(産経新聞ヘリから、寺口純平撮影)
「大阪モデル」で最も深刻な「赤信号」が灯り、赤色に照らされた太陽の塔=2020年12月3日、大阪府吹田市(産経新聞ヘリから、寺口純平撮影)
 その結果、ついに大阪府は12月10日時点で重症者が過去最多の150人、病床使用率は72・8%にまで達した。これまで「大阪モデルの基準を結果により変更する」というとんでもない方法を用いたがゆえに、京都大の山中伸弥教授に苦言を呈されるほど出すのを避けてきた大阪モデルの「赤信号」を、ついに12月3日に初めて点灯させることとなった。