2020年12月12日 13:33 公開

新型コロナウイルスの感染症COVID-19のパンデミックに対する世界的な取り組みにより、世界の年間の二酸化炭素(CO2)排出量が第2次世界大戦以来で最も減少したことが明らかになった。研究結果は科学ジャーナル「Earth System Science Data」に11日に掲載された。

この研究によると、今年のCO2排出量は7%減少した。

最も大きく減少したのはフランスとイギリスで、感染の第2波に対応するための厳格な経済活動の停止が主な要因だ。

対照的に、新型ウイルスの影響から大きく回復した中国のCO2排出量は増加する可能性がある。

世界の炭素収支を報告している「グローバル・カーボン・プロジェクト(GCP)」によると、今年の炭素排出量は24億トン減少した。

一方で、2009年の世界的な景気後退の最中の減少量はわずか5億トン。第2次世界大戦末期の減少量は10億トン弱だった。

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欧州とアメリカ全体では年間で約12%減少したが、一部の国ではこれ以上の減少がみられた。

フランスでは15%、イギリスでは13%減少したという分析もある。

今回の研究に参加した、英イースト・アングリア大学のコリーヌ・ル・ケレ教授は、「英仏は他の国と比較して、かなり厳しいロックダウンを2度経験した。それが、減少の主な理由だ」と述べた。

「イギリスとフランスのCO2排出源の多くは運輸分野で、産業など他の分野からの排出はそれよりやや少ない」

「電力生産の大半が原子力エネルギーのフランスでは、さらにこの傾向が当てはまる。フランスのCO2排出源の40%は運輸分野だ」

世界の航空業界は新型ウイルスの影響を大きく受けており、今年末までに、航空分野からのCO2排出量は2019年の排出レベルを40%下回ると予想されている。

こうした傾向に逆行している可能性があるのが中国だ。

全体としては、研究チームは中国の今年のCO2排出量が1.7%減少すると予測している。しかし一部の分析では、中国はすでにCOVID-19の影響から十分回復しており、総排出量が増加する可能性があることが示されている。

「あらゆるデータは、2月と3月に中国の(CO2)排出量に大幅な減少があったことを示している。けれども、2020年末にかけての排出量についてはデータにばらつきがある」と、今回の研究に参加した、オスロ国際気候環境研究センター(CICERO)の上級研究員ヤン・イーヴァル・コースバッケン氏は述べた。

「2020年後半の中国の1日の(CO2)排出量は、少なくとも2019年と同レベルに近づいている。むしろ、パンデミックの影響があったにも関わらず、中国の今年1年間の排出量が2019年と比較して増加したかもしれないと推測している」

研究者たちは、世界がパンデミックに対応する中で起きたCO2排出量の劇的な減少により、気候政策に関連した長期的な減少が見えなくなっていると考えている。

世界のCO2排出量の年間増加率は、今世初頭の約3%から2010年代には約0.9%にまで減少した。この変化の主な要因は、石炭系エネルギーの使用削減だ。

「2020年以前の議論の焦点は、世界の化石燃料由来のCO2排出量がピークに達している兆しがあるかどうかだった」と、CICEROの研究ディレクター、グレン・ピータース氏は述べた。

「COVID-19はこうした論争を変化させた。(CO2)排出量の増加を回避し、排出量がすでにピークに達しているのかどうか問うものへと変えた」

今回のプロジェクトに関わった研究者全員が、2021年にCO2排出量が再び増加するのはほぼ間違いないとみている。

科学者たちは、炭素排出量の増加を最小限に抑えるために、環境を犠牲にする「ブラウン」な対応ではなく「グリーン」な対応を求めている。回復資金を化石燃料ではなく持続可能なプロジェクトに使うべきという意味だ。

また、都市部での移動手段を徒歩や自転車に変えたり、電気自動車を速やかに導入したりする努力も必要だと主張している。

2020年にCO2排出量が20億トン以上減少したのは朗報だが、科学者たちは、気候変動への国際的な取り組みを決めた2015年のパリ協定の目標達成のためには、今後10年間で毎年最大20億トンのCO2削減が必要になると指摘する。

「世界の(CO2)排出量は昨年ほど多くはなかったものの、それでも約390億トンものCO2が排出されており、大気中のCO2のさらなる増加は避けられない」と、研究を率いた英エクセター大学のピエール・フリードリンスタイン教授は述べた。

「大気中のCO2レベル、ひいては世界の気候は、世界のCO2排出量がほぼゼロになって初めて安定する」

(英語記事 Covid drives record emissions drop in 2020