
2020年12月13日 11:27 公開
アメリカで、14日から米ファイザー・独ビオンテック製の新型コロナウイルスワクチンの接種が始まる見通しとなった。政府関係者が明らかにした。米食品医薬品局(FDA)は11日に、このワクチンの緊急使用を許可した。
ワクチンの供給を統括しているガスタヴ・パーナ陸軍大将は、最初の300万回分がこの週末に「アメリカ全土」に行き渡ると説明した。
アメリカでは12日、新型ウイルスによる感染症で新たに3309人が死亡したことが確認された。米ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、これは1日当たりの死者数としては世界最多。
<関連記事>
パーナ将軍は13日に開かれた連邦政府のワクチン計画「オペレーション・ワープ・スピード」の記者会見で、「24時間以内」にワクチンがコンテナに積まれると話した。
また、「14日には全国145カ所にワクチンが到着し、15日にはさらに425カ所に届く。16日には最後の66カ所にも到着する予定だ」と説明し、これで最初の300万人分の供給が完了する予定だと述べた。
将軍はさらに、「COVID-19という敵を倒すのに必要な」ワクチンが安全に供給されることに「100%の自信を持っている」と話した一方で、「アメリカ人全員がワクチンを接種できるようになるまで仕事は終わらない」と述べた。
ファイザーとビオンテックのワクチンはすでにイギリスやカナダ、バーレーン、サウジアラビアで民間への接種プログラムが始まっている。アメリカの保健当局は、最初の供給分は医療従事者と介護施設の入居者に優先して接種させるとみられている。
来年1月には、最優先グループ以外の市民も接種できるようになり、4月までには国全体に広く行き渡る見通し。
FDAは緊急使用を許可
新型ウイルスワクチンについてFDAに提言する立場の専門家委員会は10日、ファイザー製ワクチンの緊急使用を許可するよう勧めた。委員23人の専門家パネルは、ワクチンがもたらす利益がリスクを上回ると結論付けた。
緊急使用は完全な認可ではなく、これについてファイザーは、別途申請する必要がある。
スティーヴン・ハーンFDA長官は、緊急使用の許可は「オープンで透明性のある評価プロセス」によって下りたもので、このワクチンが「安全性や高価、製造品質などについて、FDAの厳しく科学的な基準に見合う」ことを証明していると述べた。
ハーン長官をめぐっては、政府から11日に緊急使用を許可するか、辞任するよう指示されていたとの報道が出ていたが、ハーン氏は「事実ではない]と否定。
認可プロセスは政治的に歪められていないと強調した。
ファイザーのワクチンの仕組み
ファイザーとビオンテックのワクチンは、mRNAというウイルスの遺伝子コードの一部を注射することで人間の免疫システムを訓練する、実験的な手法によって開発されている。
このワクチンを接種すると新型ウイルスに対する抗体が生成されるとともに、感染した細胞を破壊するT細胞が活性化する。
このワクチンは間に21日間の間隔を空けて2度接種する必要がある。免疫自体は1回目の接種で作られ始めるが、2度目の接種から7日目で完全になるという。
一方、ファイザーのワクチンは超低温で保存する必要があり、流通を困難にしている。同社は、ドライアイスを使った特別な輸送コンテナで、直接ワクチンを打っている場所まで運ぶとしている。
アメリカ政府はファイザーと1億回分のワクチン供給契約を結んでいるほか、米モデルナが開発したワクチンも6月までに2億回分を確保する予定だ。
モデルナ製のワクチンは現在、FDAの許可を待っている状態。