2020年12月13日 14:20 公開

イギリスと欧州連合(EU)が年末の期限内に通商協定を結べなかった場合、漁業水域を守るために英海軍艦を派遣する可能性が浮上している。これについて、欧州だけでなく英下院国防委員会の委員長(与党・保守党)からも反発が相次いでいる。

今年1月のブレグジット(イギリスのEU離脱)を受けた通商協議は難航しており、13日の期限までに合意に至れなかった場合、EUとイギリスの間には国境管理や関税などが復活することになる。

焦点となっている漁業権についてEUは、加盟国がこれまで通りイギリスの海域で漁ができるようにすべきと主張。これを認めない限り、イギリスにEU市場への特別なアクセスを認めないとしている。

一方のイギリスは、これは主権国家として認められないと反発している。

ボリス・ジョンソン首相は合意なしとなる可能性が「非常に高い」と言明。EUも、合意がない場合の緊急時対応計画を策定するなど、協定締結に至れない公算が高まっている。

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イギリスの国防省は12日、ブレグジット後の移行期間が終了する12月31日以降、「あらゆるシナリオ」に対応できるよう準備していると述べた。

沖合いの哨戒艇4隻を新たに海域警備に派遣することで、「独立した海洋国家としての権利を守るために強力な対策を講じる」ほか、政府支援に1万4000人の海軍兵を待機させる用意があるという。

海軍の報道官はまた、海軍警察の権限を拡大し、海兵が外国船に乗り込んで違反者を逮捕できるようにする計画もあると述べた。

イギリスは従来から、漁業権保護のために海軍艇を配備している。国防省のウェブサイトによると、定員45人のリバー級哨戒艦3隻がすでに「少なくとも1年に275日間、イギリスと欧州の漁業法を守るために稼動している」という。

海軍派遣は「みっともない」

下院国防委員会のトバイアス・エルウッド委員長(保守党)は、漁業水域を守るために砲艦を配備するのは「みっともない」と批判。こうした脅しは今も続く交渉を阻害するもので、「全く無責任」だと述べた。

BBCのラジオ番組に出演したエルウッド議員は、「今はもう(16世紀の)エリザベス朝ではない。グローバルなイギリスになったのだから、もっと行動指針のレベルを上げなくてはならない」と説明した。

「最悪のシナリオに備えることと、交渉の最後の48時間を有効活用して合意に至ること、これはまったく別のことだ」

その上で、政府は「すでに一致している内容」に集中するべきで、漁業権など持ち越しになりそうな問題は、通商協定が結ばれてからでも解決できると話した。

保守党で幹事長経験のあるクリス・パッテン卿も、ジョンソン首相が「イギリスは特別だと思い込んで、制御できない鉄道に乗ってしまっている」と批判した。

スコットランド自治政府のハムザ・ユーサフ法相はBBCに対し、「イギリス政府の砲艦外交は、スコットランドの海域では受け入れられない」と述べた。

「我々は必要だと思えば漁業権を保護する。スコットランド警察やマリン・スコットランドはこうしたことに長けている。しかし同盟国、北大西洋条約機構(NATO)の同盟国を、船を沈めるぞと脅したりはしない」(編集注:マリン・スコットランドはスコットランド領海の管理を担当する公的機関)

一方で元英海軍トップのアラン・ウエスト卿(退役提督)は、政府の方針を擁護。「海軍が政府の指示に従うのは、まったくもって適切なことだ」と述べ、権限拡大によって外国漁船との「荒っぽい」もめごとに海軍として有効に対処できるようになると付け加えた。

ジョンソン首相は9日、EUとの通商交渉の行き詰まりを打開するため、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長と会談した。しかしこの時は目的は果たせず、13日を期限とすることで合意した。

ジョンソン氏は、漁業権や競争ルールなど重要な課題について、EU側に「大きな変更」が必要だと主張。これに対しフォン・デア・ライエン氏は、この「困難な」協議は合意なしで決着する可能性が最も高いと話した。

ジョンソン首相はまた、欧州委員会を通さずに直接エマニュエル・マクロン仏大統領およびアンゲラ・メルケル独首相と課題について協議したいと要請したが、EUはこれを認めなかった。

交渉はEUのミシェル・バルニエ首席交渉官とイギリスのデイヴィッド・フロスト首席交渉官の間で行われている。

(英語記事 No-deal navy threat 'irresponsible' - Tory MP