2020年12月14日 12:49 公開

米大統領選の投開票日は5週間前のことだったが、次期大統領を正式に直接選ぶ投票は12月14日に行われる。

アメリカの有権者が11月初めに大統領選で投票する際、実は大統領を直接選んでいるわけではない。有権者は「選挙人(elector)」と呼ばれる538人を州ごとに選んでいる。有権者の投票結果を受けて選ばれる選挙人538人を「選挙人団(electoral college)」と呼ぶ。

全米50州とコロンビア特別区(首都ワシントン)に割り振られた選挙人は、各州とワシントンでそれぞれ14日に集まり、投票する。州では州都に集まることが多い。

どういう人が選挙人になのか

合衆国憲法は選挙人について、連邦議会議員や連邦政府の現職公職者であってはならないと、それだけを定めている。そのため、民主党と共和党をはじめ、大統領候補を擁立する政党はさまざまな人を選挙人に選んできた。

引退した政治家――2016年にはビル・クリントン元大統領がニューヨーク州の選挙人となり、妻ヒラリー候補に投票した。クリントン元大統領は今回もニューヨーク州の選挙人になった

州政府など地方自治体の公職者――ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ州知事は2016年と今回、同州の選挙人になった

各州の党や団体関係者、活動家やロビイストなど――ここに分類される2人を下で紹介する

このほか、大統領候補の推薦で選挙人になる人もいる。

選挙人の投票

大統領候補を擁立している政党は、大統領選の投票日前に自党の選挙人を指名、もしくは選任する。選ぶ条件やルールは州によって異なる。

各州と首都ワシントンには、おおむね人口に応じて選挙人の人数が割り当てられている。総数538人は、連邦議会の上院議員100人と、人口比で人数が決まっている下院議員435人に、首都ワシントンの3人を足した人数。

投票結果を州選挙委員会と知事が認定することで、どの党の選挙人が12月14日の選挙人団投票で投票するかが決まる。

選挙人は通常、選挙結果に応じて、その州で最多得票を得て勝った自党の候補に投票すると誓約している。

ただし、最終的に14日に誰に投票するかはその選挙人次第。きわめて異例だが、自党の候補への投票を拒否する、いわゆる「不誠実な選挙人」と呼ばれる人たちもいる。

2016年には民主党から8人がクリントン氏に投票することを拒否し、選挙人の選び直しを経て、5人がクリントン氏以外に投票した。共和党からは2人がトランプ氏以外に投票した。「不誠実な選挙人」が複数出たのは、1948年以来初めてのことだった。

このため今回の選挙に向けて各州は、支持を誓った候補以外に投票することを禁止するルールを強化。もしも選挙人が、誓約した候補以外に投票した場合は、解任してその票を帳消しにするなどの動きを進めており、連邦最高裁もこの動きを支持している。

2020年の選挙人は

11月3日の選挙では、バイデン氏が選挙人306人、ドナルド・トランプ氏が232人を獲得したという結果になっている。

トランプ大統領はこの結果を受け入れず、不正選挙だとして法廷闘争を展開したものの、各地で敗訴が続いている。バイデン氏勝利の結果を無効にするよう求める複数の訴訟を、連邦最高裁も退けている。

トランプ氏は選挙結果を司法の場で争うだけでなく、共和党が多数を占める州議会に働きかけ、選挙結果を問わず、バイデン氏でなく自分に投票する選挙人を選ばせようとしている。しかし、選挙法の専門家たちはこの有効性や合法性を疑問視している。たとえば、バイデン氏が勝ったジョージア州では州議会も州政府も共和党が押さえているが、トランプ氏の要請を受け入れていない。

各州政府とコロンビア特別区は、選挙結果をすでに認定している。この通りに選挙人が14日に投票すれば、バイデン氏は正式に次期大統領になる。バイデン氏支持を誓約した民主党の選挙人がたとえ数人が「不誠実な選挙人」になったとしても、バイデン氏が過半数270票を下回る可能性はきわめて低い。

選挙人団の投票は1月6日、連邦議会の上下両院合同委員会が読み上げ、これをもって最終的に次期大統領が決まる。

ニューヨーク州の選挙人には

今年の選挙人538人には、ヒラリー・クリントン氏も含まれる。

元ファーストレディで元国務長官のクリントン氏は、前回の大統領選でトランプ氏に敗れた。

現在ニューヨーク州に住むクリントン氏は、同州で勝ったバイデン氏とカマラ・ハリス次期副大統領に投票することになる。自分が選挙人に選ばれたことを発表した際、クリントン氏は「とてもわくわくしている」と述べていた。

アメリカでは、建国にさかのぼる選挙人の仕組みを批判し、国民の直接投票で、全国的な得票数で大統領を決めるべきだという意見の人も大勢おり、クリントン氏もその1人。2016年選挙でクリントン氏は、全国的には300万票近くトランプ氏に上回ったが、ペンシルヴェニアやミシガン、ウィスコンシン各州を落としたため選挙人の数でトランプ氏に敗れた。

「本物の変化」

カリー・ペネベイカー氏は、3人の父親で、小さい会社の社長。そして、確固たる民主党支持者だ。ウィスコンシン州の選挙人10人の1人として、バイデン氏とハリス氏に投票する。

ペネベイカー氏は2017年以来、民主党全国委員会の州代表を務めている。2016年には下院選に新人候補として出馬して敗れた。そのため、ウィスコンシン州の政界では知られた顔だ。

「2016年大統領選では選挙人としてヒラリー・クリントンに投票するはずだった」ものの、同州でクリントン氏が敗れたため、「アメリカ初の女性大統領に投票することができなかった」とペネベイカー氏は言う。

「少なくとも今回は、ジョー・バイデンに投票できる。あの人なら、政治にある程度の品位や誠実を取り戻してくれるはずだ」

ウィスコンシン州の選挙人10人のうち、黒人はペネベイカー氏ともう1人だけだ。それだけに、ハリス次期大統領の就任には期待していると言う。

「白人ではないからといって敵視されたくない。初の女性副大統領、初の黒人副大統領の誕生によって、自分たちを平等に扱ってくれて、自分たちを人間として見てくれる人が就任することになる」

「とても名誉ある立場」

ナオミ・ナルヴェズ氏は、5人の子供の母親で地域活動家だ。そして熱心な共和党員でもある。テキサス州の選挙人38人の1人として、トランプ大統領とマイク・ペンス副大統領に投票する。

テキサス州で共和党役員を務めるほか、学区の健康委員会から地元自治体の倫理委員会まで、様々な地域活動に参加している。地元自治体の公職に就いていた義理の姉によって、選挙人に推薦され、州の党大会で選ばれた。

「とても名誉ある立場で、地元の下院選挙区の人たちが私に投票してくれてとても感謝している」と、ナルヴェズ氏は言う。

テキサス州を含め17州においては、選挙人は大統領選の結果に縛られずに投票することができる。そのため2016年には、テキサス州の選挙人も2人が「不誠実な選挙人」となり、トランプ氏ではなく共和党から大統領選に出馬していたジョン・ケーシック氏とロン・ポール氏に投票した。

しかしナルヴェズ氏は、自分は断固としてトランプ大統領を支持するのだと話す。

「自分たちの下院選挙区の代表がきちんと有権者の意思に沿って誠実に、ドナルド・J・トランプ大統領に投票するようにしなくてはと思っていた。自分がその代表になるべきだと思っていました」

(英語記事 Electoral College: The people who ultimately pick the US president