2020年12月15日 10:55 公開

ドナルド・トランプ米大統領は14日夜(日本時間15日朝)、ウィリアム・バー司法長官(70)がクリスマスまでに退任するとツイッターで発表した。バー氏は辞表で、今月23日に辞めると大統領に伝えた。

トランプ氏はバー氏の辞表をツイートし、「我々はとても良い関係だった。素晴らしい仕事ぶりだった」と書いた。

当面はジェフ・ローゼン司法副長官が長官代行を務めるという。

トランプ氏がツイートした直前には、全米各地の選挙人団投票で、ジョー・バイデン次期大統領が過半数を獲得し、当選が正式に確定していた。

バー長官の任期は、トランプ氏の大統領任期が終わる1月20日に同時に終わるはずだった。しかし、大統領選は不正だったと主張し続けるトランプ氏とは裏腹に、バー氏は今月1日、選挙結果を覆すほどの大規模な不正の証拠は得ていないと発言していた。これを受けて、バー氏は任期満了前に退任するのではないかと見られていた。

バー氏は大統領にあてた辞表で、不正選挙の指摘を司法省がどう検討しているか、大統領に「最新状況と今後の検討方法を伝える機会」を与えられたことに感謝するとしている。不正投票の指摘に対する検討について、これ以上の詳細は示さず、トランプ大統領の任期中の成果を強い調子で次々と称賛した。

バー氏は1990年代に父ブッシュ政権の司法長官だった。

近年は半ば引退状態にあったが、2018年11月にジェフ・セッションズ前司法長官がトランプ氏に解任されたのを受け、2019年2月から後任となった。セッションズ氏は、2016年大統領選に対するロシアの介入疑惑捜査から自ら退き、ロシア疑惑捜査に対するロバート・ムラー特別検察官の任命を認めたことから、トランプ氏の怒りを買い、解任された。

このムラー特別検察官による捜査報告書の扱いについては、民主党やムラー氏自身もバー長官を批判した。その後も、トランプ氏の意向に沿った動きを続けるバー長官に対して民主党の批判は高まったが、大統領選の結果について不正の証拠は見つかっていないと発言したことから、トランプ氏はこれを容認しないのではないかと観測が飛び交っていた。

トランプ大統領は11月3日の選挙以来、選挙結果は不正だと立証されていない主張を繰り広げ、法廷闘争を続けるほか、自分が負けた一部の州の共和党知事や州議会幹部に働きかけ、結果を覆そうとしている。


<解説> うわさは本当だった―――アンソニー・ザーカー、北米担当記者

バー長官が早めにトランプ政権を離れたがっているといううわさは、本当だった。辞任・解任をツイッターで発表するという伝統的なトランプ的扱いを受けたものの、大統領のツイートは好意的で、長官に感謝していたし、ツイートした長官の辞表でバー氏は熱烈に大統領を称賛していた。

不正選挙の指摘に対する司法省の調査をめぐり、長官と大統領の間に不和があったとしても、それは表ざたにはならなかった。

バー氏の長官としての行動で特に記憶されるのはおそらく、ムラー特別検察官のロシア疑惑捜査への対応だろう。トランプ大統領にとって政治的な爆弾になりかねない報告書だったが、まず要点のみを事前に公表し、しかも特に深刻な内容が目立たないようにした。

今回の選挙をめぐる発言よりも、このムラー報告書の扱いと、それに対する感謝の方が、大統領の中では大きかったのかもしれないし、それゆえに2人は友好的に別れることができたのかもしれない。あるいは、トランプ政権の終盤を迎え、退任するしないでもめるのは無意味だったのかもしれない。

しかし、バー長官が去った後の司法省では、たとえトランプ大統領が伝統的な司法省の手続きを迂回(うかい)して、側近に次々と恩赦を与えようとしても、省内での抵抗は少なくなるかもしれない。

バー氏はいま退任することで、異論や批判の多いこうした諸問題について、何も言わなくても良くなったのだ。


(英語記事 US attorney general to leave post by Christmas