西牟田靖(ノンフィクション作家、フリーライター)

 現代社会では、離婚を経験した子供の数が増えている。厚生労働省が公表している人口動態統計の年間推計を見てもそれは明らかだ。戦後間もない1947年に生まれた子供は約267万8千人で、同年の離婚件数は約8万件だった。

 それに対し2019年では出生数が86万4千人と大幅に減少する一方で、離婚件数は21万件と3倍近い数になっている。 離婚し別れる親子が激増する中、親子の生き別れが社会問題化している。

 2002年には約29万件を記録し、昨年は21万件とやや減っている。ただ、その一方で子供に会いたいと思う別居親は激増している。 

 司法統計によると全国の面会交流申立調停時件数は2000年が約2千件あまりだったのに対し、12年には1万件を突破、16年には全国で1万2千件にまで増えている。つまり別れた一人親が関係を保とうとするようになってきている。そんな中、近年、高まってきたのが離婚後の共同親権の論議である。

 私自身も7年前、妻が一人娘を連れて家を出て行ったときは、ショックで体重がおよそ10キロも減った。それまでに私は、アフガニスタンでタリバンに一時的に拘束されたり、海でおぼれて溺死寸前のところで助けられた経験があったが、そうした経験とは比べられないほど家族との別れはつらかった。

 他国でのトラブルや海難事故ならば運が悪かったと、あきらめがつくかもしれない。しかし、離婚による子供との別れは違う。相手から自分を否定されてしまうことに加え、血を分けた子供と離れることは自分自身の体が引き裂かれるような、そういう喪失感がある。しかもその苦しさがずっと続くのだ。

 離婚直後から、私は相談場所を求めて交流会に参加した。その場で私は、同様な立場にある人が実に多いことを痛感した。典型的な例としては、弁護士に解決を依頼したことでお互いがののしり合いをしてしまい、修復が不可能なほどに悪化してしまうケースがある。そのほか、夫婦ゲンカが原因で役所に相談した妻が支援措置を受けたうえ、DV(ドメスティック・バイオレンス)被害者と認定され、子供と共にシェルターに逃げ込んだというケースなどもあった。

 他にも浮気した妻をとがめると子供を連れて行かれてしまったり、子供の様子を学校に見に行くと警察に通報されたり、離婚した夫に子供を会わせたところ連れ去られてしまい成人するまで会わせてもらえなかったりといった、気の毒なケースを数多く知った。

 話を聞いていく中で私は、こうしたつらい現実を伝えねばと使命感を抱くようになった。そうして取材を重ね、3年前に「わが子に会えない 離婚後に漂流する父親たち」という著書を出版するに至った。

※写真はイメージ(ゲッティイメージズ)
※写真はイメージ(ゲッティイメージズ)

 著書を出版して以降、本件に関していくつかインタビューを受けるようになった。その場でよく質問されたのが「反対側の立場である、かつて同居していた方には話を聞かないんですか?」というものだ。また、交流会で会った当事者たちからも「ぜひ話を聞いてみてください」と言われた。

 愛し合い、子供ができ、家族となったのに別れたら会えなくなるというのは確かにおかしな話だ。これは皆さんの言う通り「さまざまな方の話を聞くべき」と決心し、20人以上のシングルマザーに会って話を聞いて回った。そのうち書籍化の依頼に許可してくださった16人の話を収録し、解説をつけてまとめたのが、先日出版した拙著「子供を連れて、逃げました」である。