田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 危機をあおるのがマスコミの仕事なのだろうか。12月18日に、インターネットに掲載された朝日新聞の記事の見出しが批判を招いている。「コロナ禍で休退学5千人超 大学生・院生、文科省が調査」という記事である。

 見出しだけを見ると、新型コロナ危機で休学・退学した大学生や院生が増加したように読み取れてしまう。しかし、記事では、現段階で大学生・院生の休退学者は前年よりそれぞれ6千人ほど減少したと伝えている。実際に、新型コロナ危機で休退学者が増加したと解釈した人もいたようだった。

 今年4~10月に全国の国公私立の大学や短大を中退した学生は2万5008人で、うち新型コロナウイルスの影響と確認されたのは1033人に上ることが18日、文部科学省の調査で分かった。中退者全体は昨年同時期より6833人減っており、文科省は、困窮する学生に最大20万円を現金給付した支援策などが一定の効果を上げたとみている。


 新聞社は一般の人よりも早く、こうした資料を手に入れることができるのだから、見出しぐらいはあおらず、正確につけるべきだろう。18日に行われた記者会見で萩生田光一文部科学相も「大学の中途退学者数については昨年度よりやや少ない状況で、休学者数についても現時点においては大きな変化は見られない」と述べているのだ。

 千葉商科大の常見陽平准教授や明治大の飯田泰之准教授らは、この記事の見出しのつけ方や、記事自体の問題意識に疑問を呈した。常見氏はツイッターにこう書いている。

すでに多くの方が指摘していますが、見出しと中身は違います。そして、あくまで現場感ですが、学生からの相談は経済的理由よりも、心の安定、さらには将来の夢が一部、壊れたことが大きいです。



 常見氏とは政治的な意見が異なり、失礼ながら度々突っ込みを入れている関係だが、学生の就活を巡る彼の問題意識についてはいつも参考にしている。今回もまた、常見氏の指摘は筆者の実感に近い。
萩生田光一文科相=2020年12月18日、首相官邸(春名中撮影)
萩生田光一文科相=2020年12月18日、首相官邸(春名中撮影)
 実感だけでは仕方がないので、ここでは秋田大の学生に対するうつ、不眠症、アルコール依存などのメンタルヘルスの調査を参考にしよう。この調査では、メンタルヘルスを損なうことに貢献する要因として、相談できる人の不在や運動不足などが挙げられた。