相談できる人の不在については、オンライン講義への移行によって、あまりキャンパスに行かなくなったことも影響しているかもしれない。しかし、それよりも学業や自分の人生が今後どうなるのか、就職や将来の夢が思うように描けない人たちが増えているのではないか。そもそも、この学生たちの不安に応えられる人が大学にどれだけいるだろうか。

 学生だけでなく教職員にとっても、新型コロナ危機のこれからの推移と、アフターコロナの社会が見えてこないというのが率直なところだろう。「相談できる人の根源的な不在」というべき状況がある。

 新型コロナ危機の本質は、経済学でいう「ナイトの不確実性」にある。ナイトの不確実性とは、感染拡大や終息といった事象に確率を付与することができないことである。簡単にいえば、天気予報のように「明日の晴れの確率は60%」などのように予測できない。

 これが経済全体だけでなく、学生たちの心理にも悪影響を及ぼしているのではないか。ナイトの不確実性を背景にした不安に対処するには、相当な覚悟が求められる。メンタルヘルスのケアや、そのためのカウンセリング体制の充実はもちろん必要だろう。ここでは、新型コロナ危機の持つナイトの不確実性に、どう対処するかを経済対策の面から考えてみたい。

 ポイントは2つある。1つは新型コロナ危機が終わるまで、政策の維持をコミットすることである。例えば、大阪大の安田洋祐准教授が提案している、感染終息まで週1万円を国民全員に支給する政策である。いわばコロナ危機限定のベーシックインカムだ。

 日本学生支援機構(JASSO)の調査によれば、大学生のひと月あたりの平均アルバイト収入は約3万円。ひと月に、これを上回る平均4万円が支給されるとなれば、家計ベースで見ても経済的なセーフティーネットとして機能することだろう。

 もう1つのポイントは予算の規模をなるべく大きくすることだ。明日の天気が分からないのであれば、晴れでも雨でもいいように支度を整えるだろう。そのときに、どちらか一方の用意しかできない小さいカバンで旅行するとなったら、両方の用意ができる大き目のカバンを持ってくる。このときのカバンが、経済で言えば政府の「予算」になる。

 菅政権の第3次補正予算案が明らかになり、規模感が不足していることが分かった。今年の7~9月のGDPギャップ(望ましい経済水準に至るまでに不足しているおカネの総額)は約34兆円だ。それ以降、経済は11月初頭までは改善したが、同月半ばから感染の「第3波」によって、再び経済が失速している可能性が大きい。

 そうなると、GDPギャップの開きはそれほど縮小していないかもしれない。そこに「真水」19兆円では不足感がぬぐえない。上記の定額給付金政策や、弱った中小企業と個人事業主を救うための持続化給付金の再給付など、経済を維持する政策を至急、打ち出していく必要がある。
オンライン授業が続く京都大学。入学試験以降、一度もキャンパスに足を踏み入れていない学生もいる=2020年8月17日午後、京都市左京区(永田直也撮影)
オンライン授業が続く京都大学。入学試験以降、一度もキャンパスに足を踏み入れていない学生もいる=2020年8月17日午後、京都市左京区(永田直也撮影)
 政府が積極的な経済政策でナイトの不確実性に抗しなければ、冒頭の朝日新聞のような見出しにあおられてしまい、われわれの不安が募るだけになってしまうだろう。