ロバート・D・エルドリッヂ(エルドリッヂ研究所代表、元在沖縄米海兵隊政務外交部次長)


 2016年の米大統領選で、劇的な「逆転勝利」によって誕生したドナルド・トランプ政権だったが、今回は、新型コロナ禍にもかかわらず辛うじて「逆転勝利」としているジョー・バイデンが政権を発足させるだろう。

 バイデンの「勝利」ついて、いち早く「お祝い」の言葉を発した菅義偉(すが・よしひで)首相は、果たして本当のバイデンを知っているのかと疑問を持たざる得ないほどの政治的な失敗と、外交非礼であったと筆者は見ている。

 つまり、いくらメディアが「当確」と報じても、相手(この場合は現職の大統領)は、「敗北」宣言を行わず、制度的な手続きが完了しない限り、「勝利」を勝手に宣言したほうに「おめでとう」と言ってはダメだ。

 一人の米国人として、菅首相の行動は米国への内政干渉であると感じ、強い不快感を覚え、とても残念だった。

 なぜなら、バイデン陣営は、メディアやIT企業をはじめ世論や世界のリーダーたちの祝福のメッセージを利用して、争い中の選挙結果を後押ししようとしたからだ。せっかく、トランプは、安倍晋三前首相とよい関係を築いてきたのに、菅首相はトランプを無視し、政敵のバイデンと組んだのだ。

 それがプラスになればよいのだが、そうなると思わない。周知の通り、バイデンは中国寄りの政治家だ。これは彼の次男のハンターに関連していることだけではなく、以前からだ。取り巻きの人物も中国絡みばかりである。

 そもそも、日米中は歴史的に三者関係にある。19世紀半ばからだが、激しくなり始めたのは、第一次世界大戦中からだ。第二次世界大戦前、戦時中、そしてその後、一貫して、そのバランスは三者関係を決定してきた。

 この三者関係は、どちらかのほうに傾けば、バランスが崩れる。バイデン政権になれば、中国に傾き、日米中の関係が崩れる。少なくとも対中宥和政策になり、中国寄りになることは間違いない。

 とはいえ、表面的な日米関係は基本的に良好になるだろう。なぜなら駐日米国大使などには知日、親日の人物が登用される見通しだからだ。日本政府に有益な情報がもたらされ、協力関係を維持するはずだ。

 ただ、2つの問題がある。まず1つは、クリントン政権、オバマ政権でリサイクルされた人物など多くの無能な人々が要職に登用され、それが日米関係に悪影響を与えることだ。

 もう1つの問題は、バイデン政権が、日本の意思決定過程にかつてないほど介入することが予想される点だ。つまり日本の自由度は完全になくなると言っても過言ではない。

 バイデンはどういう人物かを8年間のオバマ・バイデン(副大統領)政権(09年1月~17年1月)で分かるはずだ。最も知られている内政干渉は、13年12月、安倍首相が靖国神社を参拝した際、オバマ政権は日本をけん制した。
就任後初めて靖国神社を参拝する安倍晋三首相=2013年12月、東京都千代田区の靖国神社
就任後初めて靖国神社を参拝する安倍晋三首相=2013年12月、東京都千代田区の靖国神社
 国務省で作成され、在日米大使館が発表した声明では「Disappointed(落胆した)」との表現が使用された。その対応の中心だったのはバイデンで、当時一部のメディアが報道していた。