自嘲気味にそう語る彼も、来年の香港脱出を具体的に考えているのだという。

 国際社会は香港を救えないのだろうか。実は米国で2012年に成立したマグニツキー法をモデルに、中国への制裁を働きかける動きがある。同法は人権侵害に関与した国家や団体、個人に対して資産凍結やビザ発給禁止を科すもので、欧州連合(EU)でも同様の制裁措置の導入が決まった。

 日本では、超党派議員による「対中政策に関する国会議員連盟(JPAC)」が日本版マグニツキー法の実現を目指している。内容は米国などと同じものであるという。これは期待できるのか。

 「自民党議員の顔ぶれを見てください。自民党の中枢にモノを言える人たちではない。オリンピックと習近平の来日をあきらめていない政権に対して、もっと広く支持を集めないと、今のままでは議員立法は難しいと言われています」(国会担当記者)

 JPACは来年の国会での議案提出を目標としていくという。香港市民のために、現在よりも幅広い支持が必要となるだろう。

 香港の2021年はどうなるのだろうか。この問い対して、ある民主派支持の市民は、言葉を選びながら話してくれた。

 「もう分かりません。来年の裁判のニュースは、もっと暗い話ばかりではないかといわれています。楽天的な人が多い香港ですが、21年が明るいと考えている人はいません。皆、香港を愛せなくなりつつあります」(金融関係に勤める女性)

 香港は観光都市でもあった。しかし、昨年のデモ発生以降、観光業は低迷し、新型コロナウイルスの感染拡大がとどめを刺した感がある。ホテルは廃業されるか、香港入境者の14日間の隔離施設などになっている。国内線を持たない香港のキャセイパシフィック航空はコロナ禍で大打撃を受け、8500人の大規模リストラに追い込まれた。同社には、台湾で搭乗した乗客に「一つの中国」への同意を確認したという不穏な報道まである。
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
 観光客がいなくなった香港の街では、代名詞でもあった極彩色のネオン看板の撤去が進んでいる。

 「かつて香港が世界に誇っていた金融、教育、観光など、すべてが破壊されようとしています。気がついたら、自由がなくなり、大陸と同じ状態です。このまま服従の道を選ぶ香港人も多いでしょうね。私も表面上は、そうして生きていくでしょう。もう私は海外に行く気力がありません。でも、いまの香港では生き残るための服従を誰も非難できないのです」(同)。「牢獄」に入れられるよりは、自由が制限されるとはいえ「おりの中」のほうがましというわけか。

 周庭は禁錮10月の実刑ではあるが、休日などの日数が引かれ、8カ月ほどで戻れるとの見通しもある。だが、それで終わりだとは思えない。