「来年の報道は国安法違反の裁判一色でしょう。黎智英の例の通り、これまで問題視されなかったことで起訴されて重罰が下される。来年の香港は、恐怖政治の街なんです。国安法は条文よりも過酷な形で適用されています。私がこうして取材に応えることすら、危険なことです」(同)

 匿名であるが、彼女とのこうしたやりとりさえ、当局に察知される危険がある。

 「来年、周庭の国安法違反の裁判が行われるのではないでしょうか。中国批判をやめないであろう彼女を政府が許すとは思えません。周庭が伝えようとしたことを、日本の人たちは覚えておいてください。マグニツキー法もいいですが、みなさんで中国をボイコットしてください。そして、香港人が戦ったことを忘れないでください」(同)

 今回の取材で話を聞いていると、なんとも暗たんたる気分になってしまった。国安法に対して、香港市民は終わりの見えない撤退戦を続けている。反撃に転じることに希望を持てない戦いだ。

 24歳の誕生日である12月3日を刑務所で迎えた周庭からRieに手紙が届いたそうだ。

 「いま収監されている周庭から手紙が届きました。日本で親交があった人たちに『心配をかけてごめんなさい。つらいですががんばります!』という伝言がありました。彼女はいま環境に馴れようとがんばっているようです。新聞は林檎日報が読めるようですが、テレビはTVB(無線電視、香港政府寄りで民主派には不評な放送局)しか見られないそうです。いまはコロナ対策で14日間の隔離中だそうで、昼間の作業などもないとか。22時の消灯ですが、やることがないので21時には寝てしまうそうです」

 面会や手紙の回数が大きく制限される中、日本とのつながりに周庭はいちるの希望を託しているのだろうか。書けることも限られている中で、筆者は周庭からの力強いメッセージだと受け取った。彼女は法廷での涙を糧にして、いまはじっと耐えている状態なのだろう。

 周庭の手紙の話をすると、若い在日香港人がこう語った。

 「昨年の周庭はリーダーでもなくただの参加者、それなのに逮捕された。本当に気の毒だ」

 これまでの周庭の働きを否定するような言葉に聞こえて、少しむっとしたのだが、彼の真意は別のところにあった。

 「昨年のデモ以降、一人一人がこれからどう動くのか考えるようになりました。雨傘のときのようなリーダーは必要ない。みんながリーダーだと自覚しています。周庭は目立つ存在として逮捕されてしまいましたが、その間、私たち一人一人が新しい方法を考えるのです。彼女の働きに対して報いるため、できる限りのことをやるのです」
「香港独立」の旗を掲げてデモをする香港の若者たち=2020年1月1日(藤本欣也撮影)
「香港独立」の旗を掲げてデモをする香港の若者たち=2020年1月1日(藤本欣也撮影)
 雨傘運動から昨年のデモと香港人は、常に戦い方を変えてきた。沈黙の先に、新たな戦いを模索し、香港人は立ち上がることをあきらめていない。(文中敬称略)