2020年12月25日 13:50 公開

米インディアナ州インディアナポリスで20日、黒人の女性内科医が新型コロナウイルスの感染症COVID-19で死亡した。医師は数週間前、自分の人種を理由に適切な治療を施すことを拒まれたと告発していた。

新型ウイルスに感染して死亡したのは、スーザン・ムーア医師(52)。医師は入院先のインディアナ大学ヘルス・ノース病院の病室から、どうか治療してほしいと「懇願」せざるを得なかったと主張する動画を投稿した。

ムーア医師は20日、別の病院で亡くなった。

インディアナ大学の病院はムーア医師を追悼し、人種差別があったという主張はきわめて深刻に受け止めると述べた。ただし、個別の患者についてはコメントできないとした。

黒人は白人よりもはるかにCOVID-19の重症化リスクが高いことが、複数の研究で示されている。

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「一切診察せず」

ムーア医師は4日、呼吸困難になって泣いていたにも関わらず、自分の痛みを白人の医師が軽視したとフェイスブックに投稿。当時の状況について説明した。

「彼(白人医師)は私の肺の音さえ聴こうとしなかった。私に決して触れなかった。一切、診察しなかった。『私がどう感じているか、あなたが私に言うことなどできない』と、私は相手に告げた」と、ムーア医師は書き込んだ。

病院側は声明で、「医療における公平性と人種格差の削減に、真剣に取り組む組織として、差別に関する告発を非常に深刻に受け止めるし、全ての申し立てを調査する」と述べた。

そして、「この病院で働く医療者・介護者の責任感や専門性、患者に毎日提供する医療の質について、私たちは自信を抱いている」とも付け加えた。

ムーア医師の医療費支払い支援を目的に遺族のために設置されたクラウドファンディング募金サイト「GoFundMe」のページによると、同氏は19歳の息子と、認知症を患う両親を残して亡くなった。同ページではすでに10万2000ドル(約1056万円)以上が集っている。

黒人はこうやって殺される

ムーア医師は11月29日にウイルス検査で陽性と判定された。吐血や呼吸困難、高熱といった症状が現れて入院したが、内科医であってもなかなか治療が受けられなかったという。

医師は抗ウイルス薬「レムデシビル」を使ってほしいと懇願する羽目になり、胸部スキャンを要求しなければならなかったと話した。報道によると対応した医師は、ムーア氏はレムデシビルの投与対象ではなく、帰宅すべきだと伝えたという。

「麻薬中毒者のように扱われた」と、フェイスブックに投稿した動画でムーア氏は主張した。「彼(対応した医師)は私が内科医だと知っていたのに。私は麻薬など使わない。痛みに苦しんでいたんです」。

ムーア医師は医療擁護者の支援を要求し、転院を要請したという。やがて退院したものの、血圧低下と発熱のため、数時間後に病院へ戻ることとなった。

「黒人はこうやって殺されている」とムーア医師は述べた。「自宅に帰したところで、自分を守る闘い方を知らないのに」。

ムーア医師はさらに、インディアナ大学病院の最高医務責任者から、スタッフの多様性トレーニングを行うと説明があったと投稿した。しかし、同氏を差別したとされる医師からの謝罪は実現しなかった。

「私が白人だったら、こんな経験をせずに済んだはずだ。その考えは変わらない」

ムーア医師の経験と死去は、アメリカの黒人が直面する医療格差を浮き彫りにしたと、強い反発を招いて入る。

アメリカでは、白人よりも黒人やその他の人種的マイノリティのコミュニティが新型ウイルスの影響を受けている。黒人のアメリカ人は白人よりも新型ウイルスで死亡する可能性が3倍高い。

米ブルッキングス研究所の分析によると、「全ての年齢層で、黒人の死亡率は一回り上の世代の白人とほぼ同じ」だった。

学術誌「American Journal of Public Health」に2015年に掲載された論文には、「ほとんどの医療提供者には白人には肯定的な態度を取り、有色人種には否定的な態度を取るという暗黙の偏向があるようだ」とある。

(英語記事 US doctor dies of Covid alleging racist treatment