各サイトの報道などで確認したところ、その6月の漁船は、「第一桜丸」「恵美丸」という石垣島の漁船で、それ以外の大半は与那国島の「瑞宝丸」による操業(少なくとも5、7、8、9、10月の5回)であることが分かった。

 先に触れた高野氏はメルマガで「右翼のデモンストレーション船」について、「近年は石垣島で漁船をチャーターして尖閣周辺で実際に漁業を行い、その釣果の一部を実際に食するイベントを行って『このように豊かな漁場を中国に盗られてたまるか』とキャンペーンすることに力を入れているようである」としている。

 テレビ番組制作・衛星放送会社「日本文化チャンネル桜」が第一桜丸と恵美丸をチャーターして6月に操業させて帰港。その後、捕った魚を東京に空輸、高野氏が言うところの「自民極右議員」らがそれらを試食したのは、事実である。

 しかし、それらの船が2020年に尖閣まで行ったのは一度きりだ。つまり、高野氏はこの一度きりのケースだけを紹介して、「日本船は右翼のデモンストレーション船」としているのである。

 私は、その2隻を所有する漁師と話したことがあるが、彼はごく普通の、気のよいウミンチュ(漁師)であった。右翼とレッテル張りするのは失礼極まりない。

 さて、尖閣へ出漁した大半のケースを占める「瑞宝丸」はどうか。今年8月に私は瑞宝丸の本拠地である与那国島を訪れている。

 久部良港の近くに船長の実家があり、そこは釣具店を兼ねたペンションになっていた。ちなみに瑞宝丸のウェブサイトや関連映像によると、芸能人の釣りロケなどテレビの撮影に協力したこともしばしばあり、船長がかなりマスコミ慣れしていることが分かる。

 島の漁師たちに瑞宝丸について聞くと、以下のような話をしてくれた。

 「漁場をよく知っている」「新しい漁場開発に余念がない」「台湾に近寄りすぎて、海巡署(日本でいう海保)に拿捕されたことがある」とのことで、かなり貪欲に漁を行っているという印象を受けた。その一方で、「中国公船をおびき寄せる目的で尖閣へ出漁している」とか、「右翼のデモンストレーション船」といった話は一切聞けなかった。

 話を聞かせてくれた漁師たちも、かつては尖閣へ通っていたという。

 「2012年に国有化したあと、状況が厳しくなって、行けなくなった」、「『来年(2014年)から尖閣へ行けなくなるから、船を買うのはやめたほうがいい』って海保に言われた」とのこと。その一方で、「あそこは豊かな漁場。本当なら行って漁をしたい」と口をそろえた。
尖閣諸島。手前から南小島、北小島、魚釣島=沖縄県石垣市(鈴木健児撮影)  
尖閣諸島。手前から南小島、北小島、魚釣島=沖縄県石垣市(鈴木健児撮影)  
 瑞宝丸は拿捕されるのをいとわず、意欲的に漁をしている漁船。だからこそ、中国公船が日常的に現れるようになってもなお、やめずに果敢に漁を続けているということらしい。