島の漁師たちに、瑞宝丸の尖閣出漁について聞いてみた。

 「7月は、魚釣島(主島)で漁をして、その後、沖縄本島へのぼる予定だったんです。漁をして島に戻って水揚げするより、那覇まで持っていって水揚げすれば、高く売れるし、輸送の経費も浮くじゃないですか。そのとき、途中にある大正島(魚釣島から東北東に約110キロ)まで追いかけられて、邪魔されたという話です。5月に魚釣島で漁をしたときに中国公船にマークされたので、大正島まで執拗に追いかけられたって」

 その後、瑞宝丸は10月にも中国公船に追われている。そのときの様子はNHKの番組などで放映されたので、映像を見た人も多いのではないだろうか。

 瑞宝丸が与那国町漁業協同組合に所属しているしっかりした立派な漁船であるということ、理由があって尖閣へ行っているということは明白だ。身元も目的もしっかりしている瑞宝丸をわざわざ「所属不明の漁船」と中国政府がのたまったのは、勇敢にも漁をやめない瑞宝丸のしぶとさに対しての悔しさの表れであるとしか思えない。

 私はその8月の取材で瑞宝丸を見つけている。それは与那国島ではなく、那覇の泊港だ。そのとき、船長は趣味のゴルフに出かけており、話を聞くことができなかった。

 その代わり、漁労を担当している喜納さん(仮名、50)に話を聞くことができた。彼は日に焼けて肌が真っ黒で、根っからのウミンチュだと一目見ただけで分かる。

――普段はどこで漁をしますか?
「春から秋にかけては与那国島を離れて、那覇を拠点にして、主に沖縄、北は九州まで行って漁をしてるよ。途中、各地の港で給油して北上していくの。船の登録ナンバーがあるからね、現地で手数料だけ払って。釣れるのはアカマチ(高級魚のハマダイ)、キンメ。あとはキハダとかメバチといったマグロ。あとは深さ150メートルの浅瀬ならアオダイが釣れたり、マーマチが釣れたりするかな」

――どんなふうに漁をするんですか?
「ワン(私)は漁労長だから、仕掛けや竿を準備して釣る役目。船長は船を動かしてて、もう一人の見習いは仕掛けを作ってる。船長が魚群探知機を見て指示を出して、仕掛けを落として、魚群が上にいたら仕掛けを50メートルあげたりするの」
与那国の港に停泊している瑞宝丸(手前、筆者提供)
与那国島の港に停泊している瑞宝丸(手前)=2020年8月(筆者提供)
――水揚げされる魚の額はいったいどのぐらいなんですか?
「アカマチだったら30万円から40万円。アオダイだったら2300円から3千円。水揚げする場所でだいぶ値段は変わる。沖縄だったら那覇の泊港が平均してやっぱり高い。離島だとセリがなくて仲買人がいるだけだから安いよ」