石平(評論家)


 2020年10~12月のわずか3カ月間で、日本を取り巻くインド太平洋地域の国際情勢は、地殻変動ともいうべき劇的な変化を成し遂げた。

 その劇的変化の一つ一つを見ていくと、まず注目すべきは、10月1日に茂木敏充外相が外遊先のフランスでルドリアン外相と会談し、これに先立ちドイツのマース外相とテレビ会議形式で協議したことだ。

 この二つの会談を通じて、日本とフランス、ドイツの外相は、中国が進出を図る東シナ海や南シナ海情勢について話し合い、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた連携を強化することで一致した、と報じられている。欧州の主要国であるフランスとドイツが足並みをそろえて日本と連携し、インド太平洋の平和維持に関与してくることはまさに喜ぶべき歴史的な動向であろう。

 また、10月6日には、東京で日本、米国、オーストラリア、インドの外相が一堂に集まり、2回目の4カ国外相会議を開いた。この会議の中心テーマはやはり「自由で開かれたインド太平洋の実現」である。

 当日の「日テレNEWS24」が伝えたところによると、会談で4カ国の外相は海洋進出を進める中国を念頭に、日本が提唱している「自由で開かれたインド太平洋」構想を推進し、より多くの国々へ連携を広げていくことが重要だとの認識で一致したという。

 このように、日本の主導下で欧州の主要国であるフランスとドイツ、そして環太平洋地域の主要国である米国とインド、オーストラリアが団結して、中国の覇権主義的な海洋進出を封じ込めようとする姿勢を鮮明にした。上述のような動きは誰から見ても、「中国包囲網」の構築を意味するものである。

 ここで何よりも重要なのは、この一連の動きは紛れもなく日本がイニシアチブをとって推し進めたものであって、日本が中心的な役割を果たしていることである。

 「自由で開かれたインド太平洋」のための日米豪印連合という構想は、そもそも安倍晋三前首相の第1次政権のときに提唱し始めたものでだが、図らずとも安倍氏が首相職から退いた直後の10月に東京にて、世に日米豪印戦略対話(クアッド、Quadrilateral Security Dialogue)と呼ばれる4カ国連携は形ができている。そしてクワッドの東京開催に先立って行われた前述の日本、フランス、ドイツの3カ国外相会談も明らかに日本の外相を中心に実施されたものである。

 ある意味では、10月に突如姿を現した「中国封じ込めの有志連合」は、まさに2度の安倍政権、とりわけおよそ7年8カ月にわたる第2次安倍政権が日本と世界に残しておいた大いなるレガシーであり、アジアの平和と自由にとっての宝物なのである。

 そして12月になると、こうした中国封じ込めの動きはより一層本格化して、かつて見たことのない強力な流れとなっている。
日米豪印外相会合に臨む茂木敏充外相(右から2人目)、ポンペオ米国務長官(左から2人目)、ペイン豪外相(左端)、ジャイシャンカル印外相(右端)=2020年10月6日、東京都港区の外務省飯倉公館(代表撮影)
日米豪印外相会合に臨む茂木敏充外相(右から2人目)、ポンペオ米国務長官(左から2人目)、ペイン豪外相(左端)、ジャイシャンカル印外相(右端)=2020年10月6日、東京都港区の外務省飯倉公館(代表撮影)
 まずは12月5日、「産経ニュース」が独自の報道として、重大な意味を持つ動きの一つを伝えた。それは、自衛隊と米軍、フランス軍が2021年5月に尖閣諸島(沖縄県石垣市)など離島の防衛・奪回作戦に通じる水陸両用の共同訓練を日本の離島で初めて実施することとなったという内容だ。

 その記事は、「日米仏の艦艇と陸上部隊が結集し、南西方面の無人島で着上陸訓練を行う」とした上で、「東シナ海と南シナ海で高圧的な海洋進出を強める中国の面前で牽制のメッセージを発信する訓練に欧州の仏軍も加わり、対中包囲網の強化と拡大を示す狙いがある」と解説しており、それはその通りであると思う。中国が領有権を主張している尖閣諸島の防備に通じるような離島上陸訓練は明らかに、中国の軍事行動を想定してそれを撃退するための訓練であろう。