ここで最も重大な意味を持つのは、訓練の実施自体よりも、フランスという国が米国とともに参加してくることである。米国は日本の同盟国であるから、日米合同で尖閣防備の軍事訓練を行うのは当たり前だが、フランスの参加は意外であって興味深い。

 つまり、フランスはすでに意を決して、自分たちの国益とは直接に関係のない東シナ海の紛争に首を突っ込んできて、中国と対抗する日米同盟に加わろうとしているのである。もちろん中国からすればそれこそは自国に対する敵対行為であるが、フランスは一向に構わないというスタンスだ。対中国的軍事包囲網の前線に敢然と立とうとしているのである。

 実は欧州のもう一つの大国イギリスもフランスと同じような計画を立てている。共同通信社は12月5日、「英海軍、空母を日本近海に派遣へ 香港問題で中国けん制」というタイトルのニュースを配信した。記事はこう書いている。

 英海軍が、最新鋭空母「クイーン・エリザベス」を中核とする空母打撃群を沖縄県などの南西諸島周辺を含む西太平洋に向けて来年初めにも派遣し、長期滞在させることが5日分かった。在日米軍の支援を受けるとみられる。三菱重工業の小牧南工場(愛知県)で艦載のF35Bステルス戦闘機を整備する構想も浮上している。複数の日本政府関係者が明らかにした。

 今、筆者は一日本国民として、中国の軍事的膨張を憂慮しているが、ネット上でこの記事に接したとき、大きな感動を覚えた。かつては世界の海を制覇したあの大英帝国、その伝統を受け継ぐイギリスは今、空母打撃群を派遣して日本周辺の海に長期滞在させるのである。

 「長期滞在」というのは、パフォーマンスのためにやってくるのでもなければ、単なる示威行動でもない。要するに、世界の主要先進国の一つであるイギリスは、日米同盟と連携してアジアの秩序維持に一旗をあげようとしているのである。その矛先の向かうところは言うまでもなく中国である。

 先の共同通信の記事は、空母打撃群派遣の狙いについて「香港問題で中国けん制」と解説しているが、それは見当違いというしかない。イギリスはいまさら武力を用いてかつての植民地の香港を奪還するようなことはありえず、ロンドンの戦略家たちの目線にあるのは当然、日本周辺の海域で軍事的紛争が最も起きやすい場所、尖閣や台湾海峡、そして南シナ海に違いない。いざとなれば、イギリスはそれらの海域で「中華帝国」と一戦を交えることも辞さない覚悟であろう。

 そもそも、老練な外交大国・軍事強国のイギリスは、一時的な思いつきでこのような意思決定を軽率に行うような国ではない。それはむしろ、深慮遠謀の上でのイギリスの長期戦略だと見てよい。かつての世界の覇主だったイギリスはどうやら、中国こそを戦略的敵国だと認定してこのタチの悪い新覇権国家の膨張を封じ込める陣営に加わろうとしているのである。

 そして、12月15日、またもやビックニュースが飛んできた。以下、産経ニュースの記事である。

 ドイツのクランプカレンバウアー国防相は15日、岸信夫防衛相とのオンライン対談で、独連邦軍の艦船を来年、インド太平洋に派遣する方針を表明した。南シナ海での中国の強引な権益拡大をけん制するため、「自由で開かれたインド太平洋」に協力する姿勢を明確にした。

 南シナ海での中国の強引な権益拡大をけん制するため、ドイツも「自由で開かれたインド太平洋」に協力する姿勢を明確にしたということだ。
ドイツの国防相就任式典で演説するクランプカレンバウアー氏=2019年7月、ベルリン(アナトリア通信・ゲッティ=共同)
ドイツの国防相就任式典で演説するクランプカレンバウアー氏=2019年7月、ベルリン(アナトリア通信・ゲッティ=共同)
 戦後は軍の対外派遣に慎重だったドイツもついに、対中国包囲網の構築に参加することになった。フランス、イギリス、ドイツの3カ国の海軍に米海軍と海上自衛隊が加わって、世界のトップクラスの海戦能力を持つ5カ国海軍は日本周辺の海、すなわち中国周辺の海に集まって、それこそ中国封じ込めのための「海上の包囲網」を築こうとしているのである。