小倉正男(経済ジャーナリスト)

 国の経済にも、何をやってもうまくいく時期があれば、何をやってもうまくいかない時期もある。世阿弥が風姿花伝に「男どき女どきとてあるべし」と書いているのだが、今どきは使ってはいけない言葉になっている。確かにそうしたことは経済でもあるものだ。

 「米中貿易戦争」が本格化しておよそ4年を経たが、一方の主役であるトランプ大統領はその座を降りることになった。ただ、大統領がバイデン氏に代わっても「米中貿易戦争」は継続されるとみられる。

 だが、どう継続されるのか、その中身が問われる。バイデン氏の思考がどうあれ、2021年以降の世界は、米中の「経済覇権戦争」にフェーズを変えて展開されることになる。

 2020年の世界経済は、新型コロナ禍でマイナス5%を超える。08~09年のリーマンショックは100年に一度の恐慌といわれたが、それを大きく上回る最悪な事態だ。米国やドイツなどのEU諸国だけではなく、わが日本なども軒並みに大幅マイナス成長を余儀なくされる。だが、紛れもなく新型コロナの発生源である中国は、なんと一人だけプラス成長(2%内外)に達する状況である。

 なんとも納得できないというか皮肉なことだが、中国は新型コロナ禍を機に米国との経済覇権戦争で先手を打てるポジションを確保している。中国は「ロケットスタート」で世界経済のトラックに戻りすでに走り出している。だが、米国は新型コロナ禍でトラックにまだ十分に立てないでいる。

 トランプ大統領は「チャイナウイルス」と中国を非難してやまなかった。だが、新型コロナ禍で順風満帆だった米国経済がまさかの大変調に陥り、大統領の座も失うことになった。新型コロナ禍で政権を降りることになったのは、安倍晋三前首相に次いで2例目である。

 トランプ大統領には厄災そのものだが、新大統領となるバイデン氏には思わぬ追い風になったことは否定できない。新型コロナの抑え込みに必死に取り組み、これを取り除かないと経済はまともに立ち行かない。ひいては政治権力トップの座も吹き飛ぶ。

 菅義偉(すが・よしひで)首相にとってもこれは重要な教訓である。危機管理(クライシスマネジメント)をにわかに身に付けて、この有事に当らなければ安倍前首相、トランプ大統領の轍(てつ)を踏むことになる。

 コロナ禍直前の2019年、米国の国内総生産(GDP)は21・4兆ドルで、それに対し中国のGDPは14・7兆ドルだった。米国のGDPに対して中国は7割弱(69%)の経済規模に追い付いたことになる。中国の経済統計は、一般にカサ上げされているという疑念が伴っているが、それを割り引いても中国はトップに君臨する米国をピッタリとマークする位置まで攻めのぼっている。
※画像はイメージ(ゲッティイメージズ)
※画像はイメージ(ゲッティイメージズ)
 ちなみに日本のGDPは5兆ドル規模であり、中国の3分の1。日本企業の世界化(国内空洞化)もあって日本のGDPは小さく表示される面がある。もちろん、中国とは人口の違いもあるのだが、リーマンショック後のわずか10年でずいぶん引き離されたものである。